深紅の鮮血と漆黒の闇に彩られた館

名作、人気のある作品から評価せず、私自身の独断と偏見で面白かったホラー映画を選んで、ランキング化しました。知名度が低いホラー映画がいくつかありますので、ホラー映画に飽きた方も参考にして選んでみてください。

【特集】見たことを後悔するホラー映画 香港編

【香港のホラー映画の特徴】
中国への返還を前に不安や混乱に包まれた1990年代の香港では、不安定な世相を反映するかのようにインモラルな問題作を次々と製作していた。そのため、人間が人肉を食べる、どんな人にも容赦しない性的暴行、目を覆いたくなる拷問などの倫理観が壊れているホラー映画が香港では主流となっている。

No. 1 ドリーム・ホーム

【ジャンル】
スプラッター/サイコ/社会派/実話/犯罪
【公開年】
2010年
【製作国】
香港
【上映時間】
96分
【監督】
パン・ホーチョン
【出演者】
ジョシー・ホー
イーソン・チャン
デレク・ツァン
ローレンス・チョウ
ジュノ・マック
ミシェル・イェ
【ストーリー】
超高級マンションに住むことを夢見ている銀行員のチェンは、ある計画を遂行するために湾岸エリアに佇む超高級マンションに忍び込んで、入居者や警備員たちを次々と血祭りに上げる。
【シリーズ一覧】
2010年 ドリーム・ホーム
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★★★☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★★★☆
ゾクゾクする:★★★★★★★☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★☆☆☆☆
エロティック:★★★★★☆☆☆☆☆
【感想】
格差が広がる香港の社会経済を背景にエロスに満ちた残虐シーンの数々で衝撃の実話を映画化した、香港のスプラッターホラー。凶器が頭蓋骨を貫通して目玉が転がり落ちるだの、腹部の刺し傷から臓物がぼたぼたと滴り落ちるだの、スプラッター映画の愛好家たちを狂喜乱舞させる趣向が盛り沢山。また、男性の勃起した男根を切り落としたり、布団圧縮用の袋で妊婦を窒息死させたりするなどの殺害方法もバリエーションに富んでいて飽きずに楽しめる。さらに欧米のスプラッター映画やスラッシャー映画では残虐シーンが大袈裟すぎて、笑ってしまうような部分が多いが、本作品の残虐シーンはとても生々しい。見終わった後は確実に気分が悪くなりそうだ。目的のためなら手段を選ばないチェンの狂気じみた行為や社会派メッセージを絡んだストーリーも秀抜で、本作品は香港のホラーの中では間違いなく面白い。

No. 2 黒い太陽七三一/戦慄!石井七三一細菌部隊の全貌

【ジャンル】
戦争/実話/胸糞/問題作/歴史劇/トーチャー/スプラッター
【公開年】
1988年
【製作国】
香港
【上映時間】
105分
【監督】
ムー・トンフェイ
【出演者】
ワン・ガン
テイエン・ジェフ
ウー・タイヤオ
ワン・ルンシン
チャウ・ヨントン
【ストーリー】
関東軍七三一部隊では伝染病の研究を表向きに、細菌兵器研究開発のために捕虜を使った人体実験が行われている中、まだ幼い少年兵たちは人間が道具のように使い捨てられていくことに疑問を抱き始める。
【シリーズ一覧】
1988年 黒い太陽七三一/戦慄!石井七三一細菌部隊の全貌
1992年 黒い太陽七三一 II/悪魔の生体実験室
1994年 黒い太陽七三一 III/石井細菌部隊の最期
1995年 黒い太陽 南京
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★★
人間が怖い度:★★★★★★★★☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★★☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★★★☆☆
エロティック:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
「検索してはいけない言葉」にランクインするほど、物議を醸した問題作。細菌兵器開発のために多数の中国人や欧米人を人体実験に利用した日本軍の残虐さに焦点を当てている内容だが、その中に本物の動物虐待と思われるシーンがいくつかあった。過去の日本軍の過ちを忘れないで欲しいという叫びが伝わってくるのは分かるが、未成年の子供を裸体にして出演させたり、本物の動物を利用した実験に関してはどうかと思う。さらに日本軍が人体実験を実際に行なったという明確な証拠はなく、人体実験の存否について現在でも論争が続いている。つまり実話を基にしたかどうかは不明。タブーに踏み込んだ問題作のため、今の日本国内では簡単に見ることができない曰く付きの作品として扱われている。もし、見る機会があれば容赦ない残虐描写があるホラー映画という認識を頭の隅に入れた上での鑑賞を推奨したい。とはいえ、どの人が見ても嫌な気分になるのは間違いないだろう。

No. 3 八仙飯店之人肉饅頭

【ジャンル】
実話/犯罪/問題作/スプラッター/カニバリズム
【公開年】
1993年
【製作国】
香港
【上映時間】
96分
【監督】
ハーマン・ヤウ
【出演者】
アンソニー・ウォン
ダニー・リー
シン・フイウォン
ラウ・スーミン
パクマン・ウォン
【ストーリー】
八仙飯店を経営するチェンが麻雀で使った金を支払わない事に腹を立てた従業員のウォンは、チェン一家を皆殺しにして店を乗っ取り始める。
【シリーズ一覧】
1993年 八仙飯店之人肉饅頭
1998年 八仙飯店之人肉饅頭2
1999年 八仙飯店之人肉饅頭3/エンド・オブ・マーダー
2003年 Bloody Buns
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★★☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★★☆☆
ゾクゾクする:★★★★★☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★★★☆☆
エロティック:★★★★☆☆☆☆☆☆
【感想】
マカオで実際に起きた猟奇殺人事件を基にした傑作ホラー。"セルビアン・フィルム"に匹敵する暴力描写が多数盛り込まれている内容のため、世界各国で上映禁止になった。罪のない子供たちが次々と殺される、割り箸を大事な部分に挿入する等の倫理的にアウトなシーンが観客に強烈な衝撃とトラウマを与えたことで有名。脳裏に焼き付く映像も印象的だが、殺人鬼を演じたアンソニー・ウォンの演技が他のホラー映画とは比べ物にならないぐらいの生々しさと迫力がある点が個人的には印象に残った。分かりやすく言えば名演が光るホラー映画として有名な"ミザリー"や"シャイニング"のように本作品でもインパクトが強い顔を拝めるのだ。色んな意味で倫理的物議を醸した内容になっているため、ホラー初心者やスプラッター映画が苦手な方などは、本作品を軽い気持ちで鑑賞すると後悔するかもしれない。とはいえ、警察の連中の寸劇がコメディタッチに描かれているシーンが劇中では唯一の笑いを誘うシーンだった。このシーンは果たして必要だったのだろうか。

No. 4 ザ・スリープ・カース

【ジャンル】
カニバリズム/サイコ/幽霊/憑依
【公開年】
2017年
【製作国】
香港
【上映時間】
102分
【監督】
ハーマン・ヤウ
【出演者】
アンソニー・ウォン
ミシェル・ワイ
ラム・カートン
ブライアント・マック
【ストーリー】
睡眠を専門に研究している医学部教授ラムは、原因不明の不眠症に苦しむモニークを救う目的で禁断の実験を試みるうちに、決して踏み込んではいけない驚愕の真相に辿り着く。
【シリーズ一覧】
2017年 ザ・スリープ・カース
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★☆☆
人間が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★☆☆☆☆☆
エロティック:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
アジアンホラーの基本をしっかり抑えた上で、ショッキングな残虐描写と凄惨なストーリーで魅せるカニバリズムホラーの良作。"八仙飯店之人肉饅頭"や"エボラ・シンドローム/悪魔の殺人ウィルス"などの傑作ホラーを生み出してきたハーマン・ヤウ監督が数々のホラー映画で培った映像製作の知識を活かしたことで、本作品のカメラワークとストーリーは、今までの作品と比べると洗練されているように感じた。また、香港のホラー映画の醍醐味ともいえる遺体の解剖や首の切断などの残虐描写も悍ましいが、アジアンホラーが得意とする呪いによる幻覚の演出もなかなか不気味で、全体的には見応えのある作品に仕上がっていた。ただ、残虐描写は終盤でしか見ることができないため、"八仙飯店之人肉饅頭"や"哭悲/The Sadness"に匹敵するレベルのスプラッターホラーを期待している人にとっては物足りないと思う。要するに過度の期待は禁物だ。

No. 5 エボラ・シンドローム/悪魔の殺人ウィルス

【ジャンル】
病気/犯罪/問題作
【公開年】
1996年
【製作国】
香港
【上映時間】
98分
【監督】
ハーマン・ヤウ
【出演者】
アンソニー・ウォン
ワン・イェンミン
シン・フイウォン
ロー・マン
【ストーリー】
特殊な免疫を持つ犯罪者のカイは、自身がエボラ菌に感染していることを知らずに、生ける害毒としてエボラ菌を香港中にまき散らす。
【シリーズ一覧】
1996年 エボラ・シンドローム/悪魔の殺人ウィルス
【評価】
ストーリー性:★★★★☆☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★★
人間が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★☆☆☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★★☆☆☆
エロティック:★★★★★☆☆☆☆☆
【感想】
不謹慎で不道徳で不快。人としてあるべき姿の真逆を描いた、ホラー映画界屈指の問題作。女性を性の道具としてしか見ていない、お金持ちになるためならどんな手段も厭わない、人種差別を平気でする等の鬼畜なカイの顔は狂気に満ちていて、とにかく強烈だった。終いには、食欲が後退するほどの下劣な表現を多く含む内容でもあるため、予備知識がない状態で食事中に本作品を初めて鑑賞した時、とあるシーンに対して吐き気を催しそうになったことがある。特にカイが生肉をオナホールのように使ったシーンに対しては、開いた口が塞がらないほどの衝撃を受けた。このようにインモラルな描写が多い内容になっており、普段からピュアなラブストーリーや感動的なヒューマンドラマばかり見ている人が軽い気持ちで鑑賞したら「うわぁ…」となること必至。

No. 6 リサイクル 死界

【ジャンル】
幽霊/ファンタジー
【公開年】
2006年
【製作国】
香港
【上映時間】
108分
【監督】
オキサイド・パン
ダニー・パン
【出演者】
リー・シンジエ
ラウ・シウミン
レイン・リー
ローレンス・チョウ
【ストーリー】
次回作の執筆が難航する人気作家のディンインは、自身が考えては破棄していた小説の設定が周囲で現実に起こり始めたことで、現実と虚構の狭間で混乱し始める。
【シリーズ一覧】
2006年 リサイクル 死界
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★☆
人間が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★★★★★★★
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
美しく退廃的で不気味な世界観を堪能できるホラーファンタジーの良作。悪夢の迷宮と化した廃墟を彷徨うディンインに近づいてくる幽霊たちのビジュアルがジャパニーズホラーを彷彿とさせる見た目ですごく怖かった。さらに悪夢の迷宮と化した廃墟のセットが不気味ながらも美しい雰囲気を醸し出している部分が随所に見られるポイントも良かった。前半はジャパニーズホラーのような怖さで楽しめたが、後半は切ないドラマとダークファンタジー寄りの雰囲気が強くて、ホラー映画としての怖さや緊張感をあまり感じられなかった。徐々に尻すぼみになっていく感が否めない点を改善すれば傑作になれたかもしれない。このように惜しい点がいくつかあったが、全体的にはよく纏まっており、個人的には誰にでもオススメできるホラー映画だと思う。

No. 7 the EYE【アイ】

【ジャンル】
幽霊/実話/ドラマ
【公開年】
2002年
【製作国】
香港
【上映時間】
99分
【監督】
オキサイド・パン
ダニー・パン
【出演者】
リー・シンジエ
ローレンス・チョウ
キャンディ・ロー
チャッチャー・ルチナーノン
【ストーリー】
幼い頃に失明したマンは、角膜手術を受けて視力を取り戻すことに成功した日を境に、不可解な現象を次々と目の当たりにする。
【シリーズ一覧】
2002年 the EYE【アイ】
2004年 the EYE2
2005年 the EYE3
2008年 アイズ
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★☆☆
人間が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★☆☆☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
角膜移植を受けた少女が1週間後に自殺したという実話に基づいて作られたオカルトホラーの傑作。ジャパニーズホラーに近い不気味さの中に独特の泥臭さを放つホラー映画でありながらも、切ないヒューマンドラマの色が強かった。さらに不思議な事態の謎を解明していくストーリー展開も"リング"を彷彿とさせる感じで、その辺も見応えがあった。ヒューマンドラマやミステリーも重視しているため、ホラー映画としての怖さは個人的にはマイルドだと思うが、本作品と似ている"シックス・センス"よりは心霊シーンが多いため、それなりに楽しめるかもしれない。終いには、見えてはいけないものが見えてしまうという、霊感のある人の生き辛さ又は宿命的な人生を丁寧に描いた心理ドラマならではのメッセージも強烈で、色々考えさせられる部分があった。総じて、ホラー映画が苦手な方や子連れの家族も安心して見れる内容で、一見の価値はあると思う。

No. 8 キョンシー/リゴル・モルティス 死後硬直

【ジャンル】
アクション/モンスター/幽霊
【公開年】
2013年
【製作国】
香港
【上映時間】
103分
【監督】
ジュノ・マック
【出演者】
チン・シュウホウ
チン・シウホウ
カラ・ワイ
パウ・ヘイチン
アンソニー・チェン
【ストーリー】
暗い過去を抱えている元アクションスターのチンは、霊幻道士の家系に生まれたヤウの力を借りて、制御の効かない凶暴なキョンシーと化したトンと壮絶な死闘を繰り広げる。
【シリーズ一覧】
1985年 霊幻道士
1986年 霊幻道士2/キョンシーの息子たち!
1987年 霊幻道士3/キョンシーの七不思議
1989年 霊幻道士・完結篇/最後の霊戦
1989年 霊幻道士5/ベビーキョンシー対空飛ぶドラキュラ!
1992年 霊幻道士6/史上最強のキョンシー登場‼︎
1992年 霊幻道士7/ラスト・アクション・キョンシー
1993年 霊幻道士8/空飛ぶドラキュラ・リターンズ
1995年 霊幻道士 キョンシー・マスター
2013年 キョンシー/リゴル・モルティス 死後硬直
2017年 霊幻道士 こちらキョンシー退治局
2018年 霊幻道士Q 大蛇道士の出現!
2019年 霊幻道士Ⅹ 最強妖怪キョンシー現る
2020年 霊幻道士 帰ってきた九叔道士
2021年 霊幻道士XI 燃えよ!九叔道士の桃剣
2021年 霊幻道士XII 英叔復活だョ! 全員集合
2022年 霊幻道士ⅩⅢ 鳳凰キョンシーの襲来
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★☆☆
人間が怖い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★☆
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
1985年に公開された"霊幻道士"を新たな形でリメイクしたホラーアクション。コメディ要素が強い"霊幻道士"と違って、本作品は終始暗く陰鬱なホラー映画だった。また、心霊ホラーを得意とする清水監督が製作に関わっているおかげか、ジャパニーズホラーらしい表現と血で血を洗う殴り合いが奇跡的にマッチしていた。"霊幻道士"シリーズのファンを歓喜させるネタやキャスティングもちゃんと活かされているため、オリジナル版のファンに限らず、純粋に怖がりたいホラーマニアでも楽しめると思う。さらに永年連れ添った夫を蘇らせるために禁断の魔術へ踏み込む老女の心情を丁寧に描いたドラマに対して、死者への冒涜や死に対してのメッセージなどを読み取ることもできるという一面もある。このように単なるホラー映画では終わらない深い魅力が凝縮されている映画でもあった。ただ、消化不良感が否めないラストに関しては好き嫌いが分かれるのは間違いない。

No. 9 ゴンタウ 降頭

【ジャンル】
超能力/リベンジ/モンスター/ミステリー/スプラッター
【公開年】
2007年
【製作国】
香港
【上映時間】
97分
【監督】
ハーマン・ヤウ
【出演者】
マギー・シュー
マーク・チェン
ラム・シュー
ケニー・ウォン
【ストーリー】
暗い過去を背負っている刑事のロクマンは、忌まわしき呪いに縛られている妻の呪いを解くために、呪いをかけた張本人を探し出そうと奔走する。
【シリーズ一覧】
2007年 ゴンタウ 降頭
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★☆☆
人間が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★☆☆☆☆☆
エロティック:★★★☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
禍々しい恐怖と刑事による謎解きが組み合わさった、猟奇的なオカルトホラーの良作。最大の見所といえば、呪いをかけられたカルピの体内から出てくるムカデは、全身が痒くなるほどの気色悪さだった。さらに腐敗した赤ちゃん、宙を舞う生首、陰険な雰囲気などのホラー演出がふんだんに盛り込まれていて、鑑賞者を飽きさせないようにしようという、ハーマン・ヤウ監督らしい工夫もみられた。意外なことにミステリー映画としての体裁もある程度、整っている点にも感心した。基本的にはエログロ満載の内容になっているため、そういう類の映画が苦手な方にはオススメできないが、変態の道を突き進みたいと考えている初心者には打って付けの作品になるだろう。

No.10 種鬼

【ジャンル】
憑依/超能力/コメディ/リベンジ/モンスター/スプラッター
【公開年】
1983年
【製作国】
香港
【上映時間】
88分
【監督】
ヤン・クァン
【出演者】
ノーマン・チュー
フィリップ・コー
マリア・ジョー
ミー・ティエン
【ストーリー】
最愛の妻を殺されたタクシー運転手のチョウは、黒魔術師の力を借りて犯人に復讐することを決意する。
【シリーズ一覧】
1983年 種鬼
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★☆☆
人間が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
スプラッター:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★☆☆☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★☆☆☆☆☆☆☆
エロティック:★★★★★☆☆☆☆☆
【感想】
本作品はモンスターホラーでありながらも、ホラーコメディであり、スプラッターホラーであり、愛する妻を殺された男性のリベンジ映画でもある。「中島監督が手掛けた"来る"を彷彿とさせる黒魔術士同士の呪術を駆使したバトル、クリーチャーによる惨劇、生々しい性描写などの様々な要素をごった煮した」という表現がよく似合う仕上がり。1980年代のホラー映画の中では、類を見ないほどの唯一無二の怪作だった。また、劇中では様々な女性が裸になりアンダーヘアも惜しみなく見せている、ポルノ並みにセクシーな濡れ場などが用意されていて、男性諸君が喜びそうな内容だったが、女性側からしたらドン引きしそうではある。このように成年向けの表現が多いなどの理由で、本作品はお蔵入り又は劇場未公開になってしまったが、個人的には知る人ぞ知る作品にしてしまうのは勿体ないと思うほどの良作だった。人によって好みや賛否が分かれる作品だが、下品なものは何が何でも駄目という方以外なら楽しめるだろう。

《その他:ランクインしなかったけど怖いホラー映画》
魔 デビルズ・オーメン(1983)、餃子(2004)、先天性獣浴魔(1994)、悪魔の臓殖/ザ・デビル、アブノーマル・ビューティ(2004)など。

【特集】見たことを後悔するホラー映画 台湾編

【台湾のホラー映画の特徴】
日本との友好関係で知られ、風土や文化的な共通点も多い台湾。日本と台湾でホラー映画の文化は密接に結びついているが、実際は台湾の風土の中で、自分たちの伝統宗教や土着怪談をベースにして製作した作品が多い。また、ほとんどの台湾のホラー映画に共通しているのは、幽霊や怪物も怖いが最終的に怖いのは人間の悪意であるという点だ。

No. 1 哭悲/The Sadness

【ジャンル】
スプラッター/サバイバル/ゾンビ/問題作/病気/胸糞
【公開年】
2021年
【製作国】
台湾
【上映時間】
99分
【監督】
ロブ・ジャバズ
【出演者】
ジーナ・レイ
ベラント・チュウ
ツー・チアン・ワング
アップル・チェン
ラルフ・チウ
ラン・ウェイホア
【ストーリー】
台湾で人間の凶暴性を助長するウィルスが蔓延している中、感染者の殺意から辛うじて逃れたカイティンは、恋人のジュンジョーと連絡を取りながら再会を果たそうと試みる。
【シリーズ一覧】
2021年 哭悲/The Sadness
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★★★★
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★★★★★★
スプラッター:★★★★★★★★★★
ゾクゾクする:★★★★★★★★☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★☆
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★★★★★★★★★☆
エロティック:★★★★☆☆☆☆☆☆
【感想】
血肉と臓物と死人が彩る狂気のスプラッターホラーの傑作。良い意味で二度と見たくない作品だった。肉を食い千切るわ、凄まじい性欲で容赦なく他人を犯すわ、感染者同士で乱交するわ、ありとあらゆる惨劇と暴力の地獄絵図。ストーリーはお決まりな感じであるものの、血の量と胸糞悪さに関しては2020年代のホラー映画の中でも間違いなくトップクラス。正真正銘のホラーマニアは見て損はしないはず。残虐なシーンの連続に目を奪われがちな作品だが、彼らが涙を流す理由を考えながら作品を鑑賞することで、単にホラーというジャンルに収めてしまうには勿体ないと思えるぐらいの深みのある内容でもあった。とはいえ、ホラー映画を敬遠しているホラー初心者だけではなく、ホラー映画をたくさん見ているホラー上級者でもトラウマになる恐れがあるため、その辺は覚悟の上で鑑賞して欲しい。

No. 2 呪詛

【ジャンル】
幽霊/実話/カルト/モキュメンタリー
【公開年】
2022年
【製作国】
台湾
【上映時間】
110分
【監督】
ケヴィン・コー
【出演者】
ツァイ・ガンユエン
カオ・インシュアン
シーン・リン
【ストーリー】
宗教的禁忌を破ったことによる呪いが自分の娘にまで降りかかったことを知ったルオナンは、呪いから逃れる方法を探して娘を救おうと奮闘する。
【シリーズ一覧】
2022年 呪詛
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★★
人間が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★★★★★☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★★☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★★★★★★☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
史上最高の興行収入を叩き出して大ヒットを記録した台湾発のモキュメンタリーホラーの秀作。古き良きジャパニーズホラーにも通じる不気味さだけではなく、集合体恐怖症の方が見たら気持ち悪くなる描写もあって、静かな不気味さとグロテスクさが良い具合にマッチしていると感じた。また、世間の常識が一切通用しなさそうなカルト団のビジュアルがトラウマ級に怖いシーンも個人的には好き。今までに見てきたホラー映画の中では群を抜いた禍々しさを感じられる作品になっており、特にジャパニーズホラーが好きな人には刺さると思う。さらに"ヘレディタリー/継承"や"女神の継承"のように呪術を題材にしたホラー映画が好きな人も本作品を楽しめる可能性は大いにある。余談になるが、「ホーホッシオンイーシーセンウーマ」という呪文を劇中に登場する主人公のルオナンと一緒にテレビの前で唱えたのはここだけの話…。

No. 3 怪怪怪怪物!

【ジャンル】
青春/胸糞/社会派/ドラマ/モンスター
【公開年】
2017年
【製作国】
台湾
【上映時間】
113分
【監督】
ギデンズ・コー
【出演者】
トン・ユィカイ
ケント・ツァイ
ユージェニー・リウ
ジェームズ・ライ
タオ・ボーメン
キャロリン・チェン
【ストーリー】
教師から奉仕活動を命じられたリンと3人の問題児たちは、独居老人の手伝いをすることになったビルの中で、正体不明の怪物に遭遇する。
【シリーズ一覧】
2017年 怪怪怪怪物!
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★★
人間が怖い度:★★★★★★★★☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★★
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★★★★★★★☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
私たちの中に潜む弱さや嫉妬心、傲慢、欲望。「怪物よりも人間の方がよっぽど怖い」という言葉があるように、人間の嫉妬心や欲望は、時にとんでもない狂気へと変貌することがある。これらをテーマにした異色のジュブナイルホラーでありながらも、現代社会の闇について色々考えさせられるリアリティが詰まった脚本も見事だった。また、ホラー映画に欠かせない胸糞要素やスプラッター描写がバランス良く調和されているという点も個人的には良かった。終いにはタイトルにもなっている"怪怪怪怪物!"の本当の意味が明らかになるラストに頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。その衝撃的なラストもかなり見応え抜群。最後に主人公が取った行動は果たして何なのか。その真相は是非、自分の目で確かめて欲しい。

No. 4 屍憶

【ジャンル】
幽霊/憑依/恋愛/ミステリー
【公開年】
2015年
【製作国】
台湾
【上映時間】
88分
【監督】
リンゴ・シエ
【出演者】
ウー・カンレン
ニッキー・シエ
田中千絵
池端レイナ
【ストーリー】
恋人との結婚を控えたTVプロデューサーのハウは、公園をジョギング中に赤い封筒を拾ったことがきっかけで、悪夢や怪奇現象に悩まされる羽目に陥る。
【シリーズ一覧】
2015年 屍憶
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★☆
人間が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★★★★★☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★☆☆☆☆☆
エロティック:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
道端で赤い封筒を拾った者は死者と強制的に結婚させられてしまうという、台湾の風習「冥婚」を題材にしたオカルトホラー。台湾が日本との合作で製作した作品のため、ジャパニーズホラーならではの繊細な演出や見る者のイマジネーションを喚起させる描写を堪能できる。物語の前半では不自然な程に伏線や違和感を盛り込んでいるが、後半では徐々に不自然さや違和感の理由が明らかになっていく。序盤に用意された伏線が明らかになっていく面白さはあるが、勘のいい人やホラー映画をたくさん見てきた人からしたら次の展開が読めてしまうかもしれない。個人的にはもう一捻り欲しいと感じた次第。とはいえ、全体的に演出や映像のクオリティは高くて、台湾の本格的なホラー映画としては十分に推せると思う。

No. 5 樓下的房客

【ジャンル】
犯罪/ドラマ/サイコ/ミステリー/エロティック
【公開年】
2016年
【製作国】
台湾
【上映時間】
110分
【監督】
アダム・ツイ
【出演者】
サイモン・ヤム
カイザー・チュアン
シャオ・ユーウェイ
リー・カンション
【ストーリー】
大家のチャンは、アパートメントの住人たちの生活をモニターで観察するのを日々の趣味として楽しむ中、謎の美女が部屋に招き入れた男を徹底的に残忍な方法で殺す光景を目撃してしまう。
【シリーズ一覧】
2016年 樓下的房客
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★☆
人間が怖い度:★★★★★★★★☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
人体破壊描写:★★★★☆☆☆☆☆☆
ゾクリとする:★★★★★☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
芸術性と演出:★★★★★★★★☆☆
胸糞度と不快:★★★★★★☆☆☆☆
エロティック:★★★★★★☆☆☆☆
【感想】
生々しい性表現に思わず目を瞑りたくなるエロティックホラーの傑作。赤いトランクを大量に集めている美女の登場と共にそれぞれの登場人物の日常とショッキングなシーンが次々と映し出され、先の読めない展開に引き込まれていく。犯人は一体誰なのか。そして、その先にあるものは一体何なのか。生々しい性表現だけではなく、徐々に追い詰められていく人間の心理をスリリングに描いている、不条理で謎に満ちたストーリー、予測不可能な展開などの演出も見所。ネタバレ厳禁の内容のため、詳しくは書けないが、話題にしたくなるような刺激を的確に与えてくれるのは間違いないと思う。日本では劇場未公開のエロティックホラーだったが、劇場公開してもおかしくないほどのクオリティを誇る作品で、見るに値するはずだ。ちなみに小学生以下の子供が見ることを想定していない作品であるため、男女の激しいベッドシーンや男同士の性的描写が多く含まれている。家族と一緒に見ると気まずい空気が流れてしまう可能性が高いため、その辺には注意して欲しい。

No. 6 呪われの橋

【ジャンル】
幽霊/ミステリー
【公開年】
2020年
【製作国】
台湾
【上映時間】
88分
【監督】
レスター・シー
【出演者】
リン・ジェーシー
モン・ガンルー
ベラ・イェン
チャン・ニン
【ストーリー】
ニュースキャスターのリアンは、2016年に東湖大学の心霊スポットで発生した怪事件の真相を究明していくうちに、予想だにしなかった事態に直面する。
【シリーズ一覧】
2020年 呪われの橋
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★☆☆
人間が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
2012年、2016年、2020年の3つの時間軸で進む物語が交差した時、映画にはまだこんな引き出しがあったのかと唸らされたミステリーホラーの良作。先が読めないストーリー展開だけではなく、ジャパニーズホラー味のある湿度高めのねっとりとしたホラー演出と観客を飛び上がらせるようなジャンプスケアがいい塩梅でミックスされている点もなかなか良かった。後半はジャンプスケアの演出が笑ってしまうほど過剰だったため、人によっては萎えてしまう可能性も。また、編集やカメラワークが荒い部分も少し見られるが、全体的に見たらB級のホラー映画にしてはよく出来ている方だと思う。というわけで、散りばめられた伏線を丁寧に回収して最後にカタルシスを感じるホラー映画が好きな人にはオススメなのかもしれない。

No. 7 目撃者 闇の中の瞳

【ジャンル】
犯罪/サイコ/ミステリー
【公開年】
2017年
【製作国】
台湾
【上映時間】
117分
【監督】
チェン・ウェイハオ
【出演者】
カイザー・チュアン
ティファニー・シュー
アリス・クー
リー・ジュン
クリストファー・リー
メイソン・リー
【ストーリー】
敏腕記者となったシャオチーは、買ったばかりの中古車の元の持ち主が9年前の事故の被害者であることを知り、その事故の真相を解明しようと奔走する。
【シリーズ一覧】
2017年 目撃者 闇の中の瞳
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★★★☆
オリジナル性:★★★★★★★★★☆
人間が怖い度:★★★★★★★★☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★☆
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★★★★★★★☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
知らない方がいい真実もある。見終わった後はそう感じてしまうほど、現代社会の根深い闇が垣間見えてくるサイコホラーの傑作だった。人間の深い闇を抉り出す描写の巧さに舌を巻いたが、ミステリー映画ならではの予測のつかない目紛しいストーリー展開も必見。裏を返せばストーリー構成がかなり複雑になっているため、集中して見ないとすぐ置いていかれるタイプの作品でもある。要するに頭の回転が遅い人にはあまりオススメできない。パズルのように複雑なストーリーを完璧に理解することは難しいかもしれないが、終盤に意外な人物が不気味な笑顔を見せる、ホラー映画並みにショッキングな猟奇描写が用意されているなどの意外性は個人的には見応えがある。このように人間が怖い要素と謎解きに頭を使いたい要素が両立されていて、ミステリー映画が好きな人とホラー映画が好きな人のどちらも楽しめるだろう。

No. 8 返校 言葉が消えた日

【ジャンル】
幽霊/社会派/歴史劇/ミステリー
【公開年】
2019年
【製作国】
台湾
【上映時間】
103分
【監督】
ジョン・スー
【出演者】
ワン・ジン
フー・モンボー
ツェン・ジンホア
【ストーリー】
放課後の教室で眠りから目を覚ました女子生徒のファンは、周囲から人の気配が消えていることに気づき、その原因を突き止めるために誰もいない校内を探索し始める。
【シリーズ一覧】
2019年 返校 言葉が消えた日
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★★☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★☆
人間が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
人体破壊描写:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
ゾクリとする:★★★★★☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★★
芸術性と演出:★★★★★★★★★★
胸糞度と不快:★★★★★☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
台湾発の人気ホラーゲーム「返校 Detention」を実写化したミステリーホラーの傑作。見終わった後の個人的な感想としては、歴史映画として見れば面白い点とホラー映画としては怖くはなかった点の二つだ。つまり見た人が「本作品に何を期待したか?」で評価がかなり分かれる可能性もある。また、ホラー映画にありがちな心霊現象が怖いというよりは、戒厳令下で中国国民党が強権政治を敷いていることによる抑圧社会の恐怖の方が強かった。つまり、台湾の暗黒時代に実際に起きた事件を題材にしている映画でもある。確かにホラー映画としての怖さは、ホラーマニアにとっては物足りなく感じると思うが、歴史の勉強になる部分や色々考えさせられる部分などがいくつかあり、一つの作品としての出来はかなり良かったと思う。というわけで、ホラーマニアに限らず、普段からホラー映画をあまり見ない人や台湾の歴史に関する本の内容が難しくて読むのが苦手な人でも楽しめるに違いない。

No. 9 紅い服の少女 第一章 神隠

【ジャンル】
幽霊/実話/ミステリー
【公開年】
2015年
【製作国】
台湾
【上映時間】
93分
【監督】
チェン・ウェイハオ
【出演者】
ティファニー・シュー
リバー・ホアン
リウ・インシャン
【ストーリー】
ジーウェイが失踪した日を境に、彼の恋人であるラジオDJのイージュンは、彼の行方を捜す中で人を惑わす魔神仔の伝承を知ることになる。
【シリーズ一覧】
2015年 紅い服の少女 第一章 神隠
2017年 紅い服の少女 第二章 真実
2018年 人面魚 THE DEVIL FISH
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
人体破壊描写:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ゾクリとする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
芸術性と演出:★★★★★★★☆☆☆
胸糞度と不快:★★★★★☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
"哭悲/The Sadness"や"呪詛"へと続く台湾ホラーブームの原点を築き上げたミステリーホラーの良作。どちらかといえば、薄暗い不穏な日常感を表現するジャパニーズホラーの要素よりも呪術アクションやジャンプスケアなどのアメリカンホラーの要素の方が強いため、恐怖度は台湾のホラー映画の中では控えめだと思う。夢落ちを乱発させている、結婚や子作りを拒む女性を否定的に描いたドラマなどの不満点はいくつかあったが、虫が嫌いな人には耐えられないシーンや台湾独自の呪いの連鎖などの良い点もいくつかあった。とはいえ、"呪詛"や"哭悲/The Sadness"のようなレベルの怖さを期待すると肩透かしを喰らうため、軽く楽しむホラー映画として鑑賞することを個人的にはオススメしたい。

No.10 ダブル・ビジョン

【ジャンル】
犯罪/カルト/ミステリー
【公開年】
2002年
【製作国】
台湾
【上映時間】
109分
【監督】
チェン・クォフー
【出演者】
レオン・カーフェイ
デヴィッド・モース
レネ・リウ
ブレット・クリモ
レオン・ダイ
ヤン・グイメイ
【ストーリー】
台湾台北市内で不可思議な連続怪死事件が発生したことがきっかけで、地元刑事のホアンは犯人像を解明するためにFBI捜査官のリクターと共に連携捜査を開始する。
【シリーズ一覧】
2002年 ダブル・ビジョン
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★☆☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★☆☆☆☆☆☆☆
人体破壊描写:★★★★★★☆☆☆☆
ゾクリとする:★★★★☆☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
芸術性と演出:★★★★★★★★☆☆
胸糞度と不快:★★★★★★☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
キリスト教の「七つの大罪」を題材にしたミステリー映画の名作として知られている"セブン"から影響を大きく受けていることが感じ取れるサイコホラーの良作。"セブン"が取り扱っている宗教はキリスト教だったのに対して、本作品が取り扱っている宗教は道教である。不可解な連続殺人事件が起きる度に刑事たちがその謎を解いていくというストーリーは両作品とも酷似しているが、本作品ではオカルトと科学の両面から事件の真相に迫っていく様子が描かれている。その辺りが"セブン"とは大きく異なる。他にもカルト団による大殺戮や二つの瞳を一つの眼球に持つ少女など、"セブン"にはない見所も詰まっていた。だが、後半に進むにつれ、話がどんどん難解になっていく印象が否めない。ストーリーを理解できたようで実は完璧に理解できていない。この表現がしっくりくるほどの難解な作品だった。好き嫌いは分かれると思うが、難解すぎて一筋縄では理解できない作品が好きな人には刺さるかもしれない。

《その他:ランクインしなかったけど怖いホラー映画》
シルク(2006)、人蛇大戦・蛇(1982)、失魂(2013)、玩命貼圖(2019)、黒の教育(2022)など。

【特集】見たことを後悔するホラー映画 イタリア編

【イタリアのホラー映画の特徴】
「面白ければ何でもありだ」という謎の精神と独特な世界観が詰まった珍作が多い。破綻したストーリーと残虐描写に力を入れた演出がイタリアンホラーの大きな特徴でもある。ストーリーが破綻しているにも拘らず、独特な世界観に中毒になるファンが意外と多い。

No. 1 食人族

【ジャンル】
モキュメンタリー/カニバリズム/スプラッター/問題作/胸糞
【公開年】
1980年
【製作国】
イタリア
【上映時間】
95分
【監督】
ルッジェロ・デオダート
【出演者】
ロバート・カーマン
ルカ・バルバレスキー
フランチェスカ・チアルディ
ガブリエル・ヨーク
ペリー・ピルカネン
リカルド・フュエンテス
【ストーリー】
アマゾンの秘境に入ったまま消息を絶った4人の男女を探しに来た教授のモンローは、森の中で彼らが食人族に食い殺されるまでの経緯が映されているフィルムを発見する。
【シリーズ一覧】
1980年 食人族
【評価】
ストーリー性:★★★★☆☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★★★★
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★★☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★★★★★
エロティック:★★★★☆☆☆☆☆☆
【感想】
恐ろしいのは野蛮人か、それとも文明人か。目を背けたくなるような残虐シーンの中に文明批判を盛り込んだイタリアンホラーの傑作。世界中で上映禁止になったホラー映画の1つとしても語り継がれている。本物の亀を生きたまま解体するシーンが特に有名で、趣味の悪さは間違いなく一級品。しかし一番怖いのは最終的に殺されることになる文明人の自己中な部分なのでは。40年以上前に作られたホラー映画であるにも拘らず、今の時代では表現できないようなレベルの描写や演出がいくつか見られ、かなり胸糞悪い内容になっている。また、本作品と同じ系統である、カニバリズム文化の中で生きている原住民を描いた"グリーン・インフェルノ"は環境破壊というテーマとゴア描写に力を入れているのに対して、本作品は文明批判と人間の怖さにフォーカスしたホラー映画だったように個人的にはそう感じた。ゴア描写とストーリーを重視したい方には"グリーン・インフェルノ"、胸糞悪さや人間の怖さを味わいたい方には"食人族"をオススメしたい。とはいえ、"食人族"を見終わった後はホラーマニアでも間違いなくトラウマになることは保証できる。動物虐待が苦手な方やホラー映画に不慣れな方は、それなりの覚悟をもって鑑賞するといいかもしれない。

No. 2 Patrick vive ancora

【ジャンル】
超能力/スプラッター/エロティック
【公開年】
1980年
【製作国】
イタリア
【上映時間】
92分
【監督】
マリオ・ランディ
【出演者】
サッシャ・ピトエフ
シャンニ・デイ
マリアンジェラ・ジョルダーノ
カーメン・ルッソ
パオロ・ジュスティ
フランコ・シルヴァ
【ストーリー】
医師のハーシェルが5人の男女をリゾート施設に招待したことがきっかけで、植物状態だったパトリックのテレキネシスが暴走し始める。
【シリーズ一覧】
1980年 Patrick vive ancora
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★★☆☆
ゾクゾクする:★★★★☆☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
エロティック:★★★★★★★★☆☆
【感想】
1978年にオーストラリアで公開された"パトリック"をイタリアが許可なく勝手にリメイクしたホラー映画。正式なリメイク版ではない。だが、本作品ではオーストラリアの"パトリック"を上回るほどの残虐非道な映像の数々を拝めるため、個人的には本作品の方が楽しめた。登場人物は自己中なお兄さんやエッチなことしか考えていない美女ばかり、そしてストーリーも支離滅裂。このように脚本やキャラクター性などに欠点があるにも拘らず、不思議と楽しめるポイントが多かった。特に全裸の女性の股間に長い棒を突き刺して口から貫通させる、フックが男性の首を引っ掛けるなどの阿鼻叫喚の残虐シーンに圧倒された。エログロな映像が多いため、「普通のホラー映画では満足できない、とにかく何でも来い」と自信のあるホラーマニアには全力でオススメできると思う。

No. 3 ビヨンド・ザ・ダークネス/嗜肉の愛

【ジャンル】
恋愛/カニバリズム/スプラッター/エロティック
【公開年】
1979年
【製作国】
イタリア
【上映時間】
94分
【監督】
ジョー・ダマト
【出演者】
キーラン・カンター
シンツィア・モンレール
フランカ・ストッピ
【ストーリー】
婚約者のアンナを病気で亡くしたフランクは、愛する女性を失った悲しみの中で、アンナの剥製と倒錯行為に没頭し始める。
【シリーズ一覧】
1979年 ビヨンド・ザ・ダークネス/嗜肉の愛
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★☆☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★★☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
エロティック:★★★★★☆☆☆☆☆
【感想】
最愛の妻を亡くしたフランクの悲劇を倒錯した愛の形で耽美的に描いたネクロホラーの傑作。フランクが人間の剥製に没頭する、硫酸で死体を溶かす、剥製にした妻の横で他の女性と愛の営みをするなどの猟奇的で官能的な世界にひたすら痺れた。良い子には見せられないセックスシーンや猟奇描写をはじめ、コメディタッチのストーリー展開のオンパレードで独特な世界観に引き込まれた。また、ツッコミどころ満載の結末も含めて、丸ごと楽しめる点も魅力的なポイント。コメディタッチに描かれているとはいえ、悪趣味極まりない内容のため、見る人をかなり選ぶ内容でもある。特にアンダーグラウンドな世界観に浸かりたい人にはオススメできると思う。

No. 4 サスペリア

【ジャンル】
摩訶不思議/モンスター/ファンタジー
【公開年】
1977年
【製作国】
イタリア
【上映時間】
99分
【監督】
ダリオ・アルジェント
【出演者】
ジェシカ・ハーパー
ステファニア・カッシーニ
フラヴィオ・ブッチ
ミゲル・ボゼ
バーバラ・マグノルフィ
【ストーリー】
プロのバレリーナを目指しているスージーは、ヨーロッパのバレエ学校に留学して早々、天井から大量の蛆虫が落ちてきたり、盲目のピアニストが盲導犬に噛み殺されたりする等の不可解な事件に遭遇する。
【シリーズ一覧】
1977年 サスペリア
1980年 インフェルノ
2007年 サスペリア・テルザ 最後の魔女
2018年 サスペリア
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★☆
人間が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★★★
胸糞が悪い度:★★★☆☆☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
イタリアンホラーの金字塔と評される名作。40年以上も前の作品であるにも拘らず、未だに話題に上がる人気ぶり。バレエ学校に単身留学してきたスージーの身の回りで起こる怪異を描いただけの映画で、ストーリーはあってないようなもの。言ってしまえばそれだけの映画ではあるが、ホラー映画という枠に限らず、ここまでアーティスティックで美しい映画はなかなか見つからないと思う。ホラー映画としての怖さは、ホラー映画に慣れている人からしたらそこまで怖くはないのが正直なところ。だが、ホラー映画として怖くないという欠点をカバーするかのように天井から落下した死体、何かに怯えるスージー、這い回る蛆虫、ゴブリンの音楽、傷口から流れる血、散りばめられた謎などの全てが美しい。それだけでも個人的には楽しめてしまう。独創性に満ちあふれた又は芸術的で美しいホラー映画を探している方にはまず、本作品をオススメしたいと考えているほど。

No. 5 ソドムの市

【ジャンル】
汚物/問題作/トーチャー/エロティック
【公開年】
1975年
【製作国】
イタリア
【上映時間】
117分
【監督】
ピエル・パオロ・パゾリーニ
【出演者】
パオロ・ボナチェッリ
ジョルジオ・カタルディ
アルド・ヴァレッティ
ウンベルト・パオロ・クィナヴァル
【ストーリー】
市町村条例を新しく制定した4人の権力者たちは、自身のの快楽を満たす目的で、18人の美男美女たちと共に性的な狂宴を繰り広げる。
【シリーズ一覧】
1975年 ソドムの市
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★★
人間が怖い度:★★★★★★★★☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★★★☆☆
エロティック:★★★★★★★★★★
【感想】
性と暴力に埋め尽くされた阿鼻叫喚の地獄絵図を描いた問題作。内容の過激さゆえに一部の地域では上映禁止になったことでも有名。現代の倫理観では表現できないエログロ要素が惜しみなく盛り込まれていることも怖いが、本作品が完成した直後にパゾリーニ監督が、ローマ郊外の海岸で死体となって発見されたというエピソードを後で知ったことの方が別の意味で怖かった。"セルビアン・フィルム"や"徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑"に匹敵するレベルの不快指数の高いシーンの連続にホラー映画が好きな俺でも気持ち悪くなったほど。反ファシズム的思想が反映されている作品であるとはいえ、スカトロや児童虐待などのあらゆるタブーが多いため、見る人をかなり選ぶ映画であることは事実。これだけは言えるのだが、特に若い女性は軽い気持ちで見てはいけない。

No. 6 ビヨンド

【ジャンル】
スプラッター/ファンタジー/ゾンビ
【公開年】
1981年
【製作国】
イタリア
【上映時間】
87分
【監督】
ルチオ・フルチ
【出演者】
カトリオーナ・マッコール
デヴィッド・ウォーベック
サラ・ケラー
ヴェロニカ・ラザール
アンソニー・フリーズ
【ストーリー】
叔父の遺産として閉鎖されていたセブン・ドアーズ・ホテルを相続したリザは、営業再開に向けてホテルの改修工事を進めていくうちに、様々な怪奇現象に巻き込まれる。
【シリーズ一覧】
1981年 ビヨンド
【評価】
ストーリー性:★★★★☆☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★☆☆
人間が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★★☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
顔面崩壊をはじめとするバリエーション豊富な残虐シーンを惜しみなく披露するスプラッターホラーの怪作。あらゆるホラー映画の要素をこれでもかと詰め込んでいるため、ストーリーが破綻気味。ストーリーの整合性を追い出すと色々破綻しているのは否めないが、気合の入ったグロテスクなシーンを連発するという、簡単そうに見えて実は難しいテクニックによって一本のホラー映画として成り立っている点は個人的には凄いことだと思う。また、地獄の門を開いたことにより日常が徐々に崩壊していく恐怖を味わうだけではなく、見終わった後の不思議な解放感を味わうこともできた。とにかく、言葉では言い表せないほどの独特な怖さが癖になる作品だった。一般のホラー映画とは一味違うテイストを持つホラー映画が好きな人にはオススメ。

No. 7 サンゲリア

【ジャンル】
ゾンビ/スプラッター
【公開年】
1979年
【製作国】
イタリア
【上映時間】
91分
【監督】
ルチオ・フルチ
【出演者】
イアン・マカロック
ティサ・ファロー
リチャード・ジョンソン
アウレッタ・ゲイ
アル・クライヴァー
オルガ・カルラトス
【ストーリー】
ニューヨークの入り江で発生した殺人事件に興味を持った新聞記者のピーターは、父親の安否を確認したいアンと共に疫病が流行しているマトゥール島に向かう。
【シリーズ一覧】
1979年 サンゲリア
1988年 サンゲリア2
【評価】
ストーリー性:★★★★☆☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★☆☆☆☆☆☆☆
人間が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★★★★☆☆
スプラッター:★★★★★★★★☆☆
ゾクゾクする:★★★★★☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★☆☆☆☆☆☆☆
エロティック:★★★☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
1978年にアメリカで公開されたゾンビ映画の金字塔とも呼ばれている"ゾンビ"は閉鎖空間での恐怖をシリアスに描いたドラマであるのに対して、本作品は腐敗したゾンビや人体破壊などのゴア描写に重きを置いているスプラッター映画である。ストーリーは薄っぺらいが、「目玉貫通や肉を食い千切るなどのゴア描写をたっぷり見せてやるぜ!」という、ルチオ監督の主張がストレートに表現されていて逆に清々しい。要するにシリアスなゾンビ映画が好きな人からしたら「何これ…?」とガッカリする可能性が高い反面、ストーリーよりエログロを重視したゾンビ映画が好きな人にはオススメできると思う。とはいえ、1970年代に撮られた本作品の特殊メイクの出来栄えは、最近のスプラッターホラーに匹敵するレベルであることから、その特殊メイクを見るだけでも一見の価値はあるはずだ。余談になるが、海中でゾンビと鮫が格闘するシーンに爆笑したのは俺だけだろうか。

No. 8 デモンズ

【ジャンル】
悪魔/ゾンビ/ワンシチュエーション
【公開年】
1985年
【製作国】
イタリア
【上映時間】
88分
【監督】
ランベルト・バーヴァ
【出演者】
ナターシャ・ホーヴェイ
ウルバノ・バルベリーニ
カール・ジニー
フィオーレ・アルジェント
パオロ・コッツォ
ニコレッタ・エルミ
【ストーリー】
悪魔の復活を描いたホラー映画の上映中に、1人の女性客が悪魔に変身したことがきっかけで、劇場は阿鼻叫喚の地獄絵図に変貌し始める。
【シリーズ一覧】
1985年 デモンズ
1986年 デモンズ2
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★☆☆☆
人間が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★★☆☆
ゾクゾクする:★★★★★☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★☆☆☆☆☆☆☆
エロティック:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
映画館という閉鎖空間の中で、目を覆いたくなるほどの惨劇が繰り広げられる様子を描いたゾンビ映画の傑作。阿鼻叫喚の地獄絵図とゴシック風味のダークなメロディが絶妙にマッチしている演出がとにかくスタイリッシュだった。この演出も素晴らしいが、それ以上に素晴らしいと感じたのは、悪魔に噛まれたことで徐々に悪魔と化していく様子の特殊メイク。CGの技術がまだ発達していない時代の中で、細部までこだわり抜かれた特殊メイクだけで魅せる作品としてはホラー映画の中では間違いなく最高峰といってもよいぐらい。ストーリーはありきたりだが、テンポよくストーリーが進んでいく点とホラーマニアが満足できるレベルの残虐シーンを惜しみなく注ぎ込んでいる点があるため、ホラー初心者からホラー上級者まで気軽に楽しめると思う。未見の方は是非、自身の目でその恐怖を味わって欲しい。

No. 9 呪いの館

【ジャンル】
幽霊/アートハウス
【公開年】
1966年
【製作国】
イタリア
【上映時間】
84分
【監督】
マリオ・バーヴァ
【出演者】
ジャコモ・ロッシ=スチュアート
エリカ・ブラン
ファビエンヌ・ダリ
ピエロ・ルリ
ジャナ・ビバルディ
【ストーリー】
イタリアの片田舎で起きる奇怪な連続怪死事件の謎を追う検屍官のクルーガーは、調査中に鞠を持つ少女の亡霊の存在を知ることになる。
【シリーズ一覧】
1966年 呪いの館
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
ジャパニーズホラーをはじめ、その後の心霊ホラーに多大な影響を与えたイタリアンホラーの傑作。最近の心霊ホラーと比べると個人的にはすごく怖いとまではいかなかったが、自分自身をずっと追いかける無限ループや外から家の中を覗き込む少女の幽霊など、恐ろしいながらも美しいと感じてしまうような演出が印象的だった。不気味でありながらも幻想的な雰囲気やイタリアンホラーならではの独特な色使いなどの魅力も詰まっていた。クラシックなホラー映画が好きな人なら楽しめると思うが、そうではない人もホラー映画の歴史を紐解くという意味で本作品を見て、色々学ぶと楽しめるかもしれない。それにしても劇中に登場した豪華絢爛な屋敷に住んでみたいと感じたのは俺だけではないはず。

No.10 悪魔のはらわた

【ジャンル】
モンスター/スプラッター/エロティック
【公開年】
1973年
【製作国】
イタリア
【上映時間】
95分
【監督】
ポール・モリセイ
【出演者】
ジョー・ダレッサンドロ
ウド・キア
モニク・ヴァン・ボーレン
アルノ・ジュエギング
スルジャン・ゼレノビク
【ストーリー】
完璧な新人類創造を目指すことを夢見ているフランケンシュタイン博士は、助手のオットーと共に新人類創造に適した優秀な人材を探し始める。
【シリーズ一覧】
1973年 悪魔のはらわた
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★☆
人間が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★☆☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★☆☆☆☆☆
エロティック:★★★★★★☆☆☆☆
【感想】
フランケンシュタインを題材にしたホラー映画の中では個人的に好きな作品。女性の腹を裂いて内臓に男性器を挿入するだの、男性同性愛者のフランケンシュタインが親友の体に欲情するだの、斬首や腕を切り落とす残虐描写があるだのとカオスな内容でぶっ飛んでいた。フランケンシュタイン博士を筆頭に登場人物全員が変態であるため、次に何が起きるかが全く予想出来ない展開も面白かった。ちなみに本作品は"ビヨンド・ザ・ダークネス/嗜肉の愛"と同様にコメディタッチに描かれているが、先述にもある通り良い子には見せられないシーンが多いため、その辺には注意して欲しい。というわけで、悪趣味な作品に抵抗がない又は心の広い人にはオススメできる作品だと個人的には思う。

《その他:ランクインしなかったけど怖いホラー映画》
地獄の門(1980)、クラシック・ホラー・ストーリー(2021)、ザ・リッパー(1982)、アクエリアス(1986)、ザ・トレイン(1989)など。

【特集】見たことを後悔するホラー映画 スペイン編

【スペインのホラー映画の特徴】
暗く陰惨な映像美とエンターテイメント性を両立させつつ、歴史的悲劇や家族愛を描いているのが特徴。また、ミステリー映画並みに練られた脚本や恐ろしくも切ない雰囲気の演出もスパニッシュホラーの特筆すべき点でもある。スペインではキリスト教を信じている人が多いせいか、悪魔払いを題材にしたホラー映画も多いようだ。

No. 1 REC/レック

【ジャンル】
モキュメンタリー/サバイバル/ゾンビ/悪魔
【公開年】
2007年
【製作国】
スペイン
【上映時間】
78分
【監督】
ジャウマ・バラゲロ
パコ・プラサ
【出演者】
マヌエラ・ベラスコ
フェラン・テラッサ
ホルヘ・ヤマン・セラーノ
カルロス・ラサルテ
【ストーリー】
ドキュメンタリー番組を制作中のレポーターのアンヘラは、通報を受けた消防隊に同行して殺人事件が発生したアパートを訪れるが、そこで想像を絶する恐怖に遭遇する。
【シリーズ一覧】
2007年 REC/レック
2008年 REC:レック/ザ・クアランティン
2009年 REC/レック2
2011年 REC:レック/ザ・クアランティン2 ターミナルの惨劇
2012年 REC/レック3 ジェネシス
2014年 REC/レック4 ワールドエンド
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★★
人間が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:★★★★★★★★★★
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★★★★☆☆
スプラッター:★★★★★☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★★★
俳優の演技力:★★★★★★★★★☆
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★★★★★☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
手持ちカメラ目線によるドキュメンタリータッチの映像で描き出したスパニッシュホラー。スペインで社会現象を巻き起こしたホラー映画の傑作。現場で起きているかのようなリアリティと限定された空間で謎を説くために進まなければならない状況が、緊張感をすごく生んでいるように感じた。上映時間がたったの70分間という短さでテンポも良い。そのため、忙しくて映画を見る時間を確保できない又は2時間超えのホラー映画が苦手な方でも楽しく見れる。逃げ場のない絶望感を味わうなら間違いなく、本作品がNo.1であることを個人的には保証したい。

No. 2 スペイン一家監禁事件

【ジャンル】
犯罪/実話/胸糞/トーチャー/ワンシチュエーション
【公開年】
2010年
【製作国】
スペイン
【上映時間】
85分
【監督】
ミゲル・アンヘル・ビバス
【出演者】
フェルナンド・カヨ
アナ・ワヘネル
マニュエラ・ヴェレ
ギレルモ・バリエントス
ドリタン・ビーバ
【ストーリー】
3人の強盗により平和な生活を破壊された家族連れのハイメたちは、繰り返される暴力に為す術もなく捕われの身となった状態で、過酷な一夜を送る羽目に陥る。
【シリーズ一覧】
2010年 スペイン一家監禁事件
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★☆☆☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★★★★
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★☆
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★★★★★★★★★☆
エロティック:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
ホラー映画をエンターテイメントとして消費している我々に悪夢のカウンターを喰らわせる史上最悪の胸糞映画。スペインで実際に起きた強盗事件を基にした内容になっているため、リアリティはすごく高い。長回しのワンカット撮影や画面分割を利用した巧みなカメラワークを用いて強盗事件の生々しさをより一層強調している演出に個人的には戦慄した。さらに娘役を演じたマヌエラの情緒不安定極まる泣き叫びも凄まじくて、見ているこっちは感情移入したくなるほどだった。本作品は"ファニーゲーム"や"バイオレンス・レイク"のように鬱展開が多い、救いのないラストなどの気が滅入るような内容になっていて、見る人を選ぶ作品であることは間違いないが、一部の人には刺さりそうな内容でもある。特に胸糞悪い映画が好きな人なら楽しめるはずだ。というわけで、心安らぐはずの平穏な家を略奪される恐怖と絶望を是非ご賞味あれ。

No. 3 ザ・チャイルド

【ジャンル】
チャイルド/サバイバル/問題作
【公開年】
1976年
【製作国】
スペイン
【上映時間】
112分
【監督】
ナルシソ・イバニエス・セラドール
【出演者】
ルイス・フィアンダー
プルネラ・ランサム
【ストーリー】
街の喧騒を離れて沖合の小さな島へ向かった夫婦のトムとエヴリンは、殺人鬼と化した子供たちが集団で大人を惨殺する光景を目の当たりにする。
【シリーズ一覧】
1976年 ザ・チャイルド
2012年 ザ・チャイルド
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★★★★
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★★☆☆☆
エロティック:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
倫理的に問題のある内容のため、2001年までDVD化されなかった幻のホラー映画。前半は夫婦のトムとイブリンが誰もいない島を探索するだけの内容で、人によっては退屈に感じる場合がある。だが、後半はホラー映画に慣れている俺でも不快に感じる内容で、見応えはかなりあるように感じた。見た目は普通の子供たちなのに天使のような笑顔で、喜々として大人たちを惨殺していく様子が特に怖かった。大人を平気で殺す子供たちに囲まれたら主人公のトムと同じ行動を取れるかどうかを問われた場合、人によっては色々な意見が出てくと思う。そういう意味では色々考えさせられるホラー映画という見方もできる。子供たちがなぜ殺人鬼になったのかの明確な原因は語られていないが、個人的には戦争や犯罪で子供たちの命を平気で奪ってきた大人に対しての警告又は復讐みたいなものだと捉えている。本作品を見終わった後、子供たちの人権を尊重しようとつくづく感じたのは言うまでもない。

No. 4 ボイス 深淵からの囁き

【ジャンル】
ミステリー/モンスター
【公開年】
2020年
【製作国】
スペイン
【上映時間】
97分
【監督】
アンヘル・ゴメス・エルナンデス
【出演者】
ロドルフォ・サンチョ
ベレン・ファブラ
アナ・フェルナンデス
ラモン・バレア
【ストーリー】
新居で息子のエリックが不可解な死を遂げた後、助けを求めるような子供の声を耳にするようになったダニエルとサラは、超常現象の専門家の助けを借りる。
【シリーズ一覧】
2020年 ボイス 深淵からの囁き
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★☆☆☆
オリジナル性:★★★★★☆☆☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
スプラッター:★★★☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★☆
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★★★★★★★☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
Netflix配信限定のホラー映画にしては珍しく、正統派のホラー映画で純粋に怖かった。事故物件に住んでしまった家族を襲う怪異の数々を科学的アプローチで解明しようとするヘルマン親子の話が描かれているが、"死霊館"を彷彿とさせるような設定とストーリー展開になっていて、新鮮味は薄いと思う。だが、暗闇を利用したホラー演出と喪失感を抱える家族の心の闇の隙をつく悪霊の狡猾さ、子供にも容赦しない凶悪さなどの"死霊館"以上の邪悪さを味わうことができた。"死霊館"や"永遠のこどもたち"のように感動的なラストを迎えるホラー映画よりも観客に恐怖を与えることだけに焦点を当てた純粋なホラー映画が好きな人ならかなり楽しめると思う。

No. 5 Night of the virgin

【ジャンル】
スプラッター/モンスター/汚物
【公開年】
2016年
【製作国】
スペイン
【上映時間】
116分
【監督】
ロベルト・サン・セバスティアン
【出演者】
ハビエル・ボダロ
ミリアム・マルティン
【ストーリー】
童貞を卒業しようと考えていたニコは、パーティーで一目惚れした熟女のメディアと一夜を共にしたことで、想像を絶する恐怖を味わう羽目に陥る。
【シリーズ一覧】
2016年 Night of the virgin
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★★★☆
ゾクゾクする:★★★★☆☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★☆☆☆☆☆
エロティック:★★★★☆☆☆☆☆☆
【感想】
単刀直入に言うと気持ち悪かった。特に出産時の痛みを知らない男性陣には見て欲しい。この感想を見て「え?どういうこと?」と感じた読者は多いはずだ。ネタばらしをすると読者の鑑賞意欲を削いでしまうため、ストーリーの詳細はここでは省くとしよう。ちなみに本作品は7年前にスペインで公開されたにも拘らず、国内では劇場未公開でDVDも販売されていないという状態。かなりグロテスクな内容で見る価値はあるはずだが、未だに劇場未公開であることが信じられないほど勿体ない。ジャンルとしてはスプラッター映画に当たるが、"13日の金曜日"や"エルム街の悪夢"よりも痛々しさはかなり上。特に出産シーンの特殊メイクがリアルすぎて、人によっては吐き気を催しそうになるかもしれない。他にも熟女と不細工なニコの絡み、ニコのマスターベーション、本物のゴキブリ、カビが生えた浴室などのインモラルな要素がたくさん詰まっていて、見る人をかなり選ぶ内容となっている。これだけは言える。潔癖症の人や虫が苦手な人が軽い気持ちで見たら卒倒するはずだ。

No. 6 DAGON

【ジャンル】
カルト/モンスター
【公開年】
2001年
【製作国】
スペイン
【上映時間】
98分
【監督】
スチュアート・ゴードン
【出演者】
フランシスコ・ラバル
エズラ・ゴッデン
ラクエル・メロノ
マカレナ・ゴメス
【ストーリー】
悪天候による船舶事故に遭った4人の男女は、救助を求めて邪神ダゴンを崇拝する村に辿り着くが、そこで世にも悍ましい惨劇を目の当たりにする。
【シリーズ一覧】
2001年 DAGON
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★☆
人間が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
エロティック:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
怪奇小説作家ラヴクラフトの「インスマウスを覆う影」を映画化したモンスターホラーの傑作。モンスターホラーにありがちな派手なアクションで演出するタイプではなく、不気味な雰囲気を最後まで保ったまま走り切るタイプの映画である。洋画ホラーにしては珍しく、中田監督の"仄暗い水の底から"と良い勝負になるほどの湿り気と生臭さの表現が上手いことに個人的には驚いた。他にも凄惨な皮剥ぎや邪神を崇拝するカルト団、怪物と人間の恋愛などのクトゥルフ神話が好きな人にはたまらない要素もてんこ盛りだった。クトゥルフ神話が好きな人でも楽しめるが、"エイリアン"や"ザ・グリード"のように王道的なモンスターホラーに飽きた人でも楽しめる可能性を秘めているに違いない。本作品をまだ見ていない人には「この機会に是非」と言いたいところだが、皮剥ぎなどのゴア描写に耐性のない人はご注意を。

No. 7 ダークネス

【ジャンル】
悪魔/ミステリー
【公開年】
2002年
【製作国】
スペイン
【上映時間】
88分
【監督】
ジャウマ・バラゲロ
【出演者】
アンナ・パキン
レナ・オリン
イアン・グレン
ジャンカルロ・ジャンニーニ
フェレ・マルティネス
【ストーリー】
曰く付きの屋敷の中で原因不明の怪奇現象が次々と発生する中、怪奇現象が発生する原因は屋敷にあると感じたレジーナは、家族を守るために屋敷の過去を調べていくうちに、40年前の皆既日蝕の日に7人の子供が失踪した事件に辿り着く。
【シリーズ一覧】
2002年 ダークネス
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★☆☆
人間が怖い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
スコット監督の"フッテージ"を彷彿とさせるような雰囲気に近いホラー映画だった。タイトルのとおり、人間が本能的に怖いと感じている暗闇を題材にしているだけあって、悪霊や怪物が派手に現れる洋画ホラーの怖さとはまた違った怖さが特徴。派手な描写はないものの、ジャパニーズホラーに近い不気味な雰囲気と家族が徐々に追い詰められていく様子の描き方は上手かった。ただ、ミステリー映画ならではの謎解きを楽しむ要素はホラー映画全体の中では少なめで、頭を使って謎解きをする楽しみを味わいたい人や本格的なミステリー映画を見たい人には物足りないかも。また、本作品の特徴を分かりやすく挙げるとしたら、ジャンプスケアやグロテスクな描写を入れずに手堅く作られた優等生的なホラー映画という感じの内容で、万人受けしやすい作風だと個人的には感じた。だが、ホラー映画が好きな人だけではなく、ホラー映画が苦手な初心者でも比較的見やすいということで、どの人にもオススメできるホラー映画であることは間違いないと思う。

No. 8 スラッグス

【ジャンル】
生物/スプラッター
【公開年】
1988年
【製作国】
スペイン
【上映時間】
92分
【監督】
ファン・ピケール・シモン
【出演者】
マイケル・ガーフィールド
キム・テリー
フィリップ・マクヘイル
パティ・シェパード
【ストーリー】
田舎町で何かに食い荒らされて骨だけになった変死体が発見される中、保健衛生局職員として働いているマイクは、奇妙な殺人事件を調べていくうちに、工場廃棄物によって突然変異した蛞蝓の仕業であることを突き止める。
【シリーズ一覧】
1988年 スラッグス
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★☆☆☆☆
人間が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★★☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★☆☆☆☆☆☆☆
エロティック:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
大量の蛞蝓を使って撮影されたシーンの数々に愕然とした問題作。"スクワーム"や"ザ・ネスト"と並ぶゲテモノ映画の金字塔的作品でもある。本作品の最大の見所は、肉の下から骨が剥き出す、蛞蝓が目玉を突き破る、美女が全裸のまま蛞蝓に食い千切られるなどの特殊メイクと役者たちの体を張った演技である。目を背けたくなるほどのグロさに一部の地域では上映禁止になったほど。ストーリーはあってないようなものだが、グロテスクなシーンがその分多くなっているため、スプラッター映画が好きな人は退屈しないと思う。とはいえ、スプラッター映画が好きな人でも吐き気を催したくなるほどの映像が頻繁に出てくるため、食事をしながらの鑑賞はくれぐれもご注意を。

No. 9 エクリプス

【ジャンル】
実話/悪魔/憑依
【公開年】
2017年
【製作国】
スペイン
【上映時間】
105分
【監督】
パコ・プラサ
【出演者】
サンドラ・エスカセナ
クラウディア・プレイサー
ブルーナ・ゴンザレス
【ストーリー】
亡き父の霊と会話をしたいと考えていたベロニカは、軽い気持ちで同級生と共に降霊術の文字盤を使って霊を呼び出したことで、身も凍りつく恐怖の出来事を体験する羽目に陥る。
【シリーズ一覧】
2017年 エクリプス
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★☆☆☆☆☆☆
人間が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
1991年にスペインのマドリードで実際に起きた事件を基にしたオカルトホラーの良作。評判はあまり良くないが、個人的には普通に楽しめた作品。軽い気持ちで降霊術に手を出した女子高校生のベロニカが悪魔に取り憑かれるという、オーソドックスなストーリーのため、ホラー演出や設定に関しては新鮮味が薄いのは否めない。だが、エンドロール前に実際の事件の写真と思われるものや警察官の証言といった、生々しい恐怖を増長させる演出がいくつかあって、それが余計に恐ろしく感じた。また、「過剰な好奇心は自身の身を滅ぼす」という教訓を得ることができて、単なるホラー映画では終わらないという一面も個人的には評価したい。ちなみに降霊術用のウィジャボードは、楽天市場Amazonなどで簡単に手に入れることができるが、本作品を見た後は軽い気持ちで霊を呼んでみようという気持ちにならなかったのは言うまでもない。というわけで、ウィジャボードひとりかくれんぼ等の降霊術を試す際は、くれぐれも自己責任でお願いしたい。

No.10 悪魔の墓場

【ジャンル】
ゾンビ
【公開年】
1974年
【製作国】
スペイン
【上映時間】
94分
【監督】
ホルへ・グロウ
【出演者】
レイ・ラヴロック
アーサー・ケネディ
クリスチーヌ・ガルボ
ポール・ベンソン
アルド・マサッソ
【ストーリー】
超音波を利用して害虫を駆除する実験の影響で墓場の地下に眠る死者が次々と蘇ったことで、町が大混乱に陥り始める。
【シリーズ一覧】
1974年 悪魔の墓場
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★☆☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★☆☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★☆☆☆☆
エロティック:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
本作品はゾンビ映画のため、生ける屍と化した人間たちが素手で人間の肉を引き裂きいて内臓を引き摺り出す残虐描写が多い。だが、スプラッター寄りのゾンビ映画が多い中、本作品はゾンビ映画にしては珍しく、作品全体に暗くて嫌な気分が漂っている雰囲気を醸し出していた。ゾンビ映画では欠かせない要素となるゾンビの造形や残虐描写に関しては、最近のゾンビ映画と比較すると物足りなさを感じるのが正直な感想ではある。このようにゾンビ映画をたくさん見てきた人からすると物足りなく感じる部分はあるかもしれないが、ホラー映画としての不気味な雰囲気の演出はどのゾンビ映画よりも上手かった。また、自然環境を破壊している人間への警鐘とも読み取れるような社会派メッセージも含まれていることから、唯一無二の存在感を放っているゾンビ映画でもあると感じた。他のゾンビ映画とは少し毛色の違うゾンビ映画を探している人にとっては掘り出し物になる可能性があるかもしれない。どうでもいい話だが、冒頭に登場する美女のヌードが脳裏に焼き付いて離れない。

《その他:ランクインしなかったけど怖いホラー映画》
悪魔の棲む森(2008)、機械じかけの小児病棟(2005)、永遠のこどもたち(2007)、スリーピングタイト 白肌の美女の異常な夜(2011)、ネスト/トガリネズミの巣穴(2014)など。

【特集】見たことを後悔するホラー映画 韓国編

【韓国のホラー映画の特徴】
韓国映画ならではの重々しい空気感や容赦ない暴力描写が絡み合っている作品が多い。また、社会のダークな部分や負の側面を描きながらもエンターテイメント性が高いことも特徴。とはいえ、韓国は日本の隣に位置している国のため、日本の影響を大きく受けたと思われるような心霊ホラーもたくさん製作されている。

No. 1 箪笥

【ジャンル】
幽霊/サイコ/ドラマ/ミステリー
【公開年】
2003年
【製作国】
韓国
【上映時間】
114分
【監督】
キム・ジウン
【出演者】
イム・スジョン
ムン・グニョン
ヨム・ジョンア
キム・ガプス
【ストーリー】
長い入院生活を終えたスミとスヨンの姉妹は、人里離れた田舎に佇む実家に帰って来るが、そこで得体の知れない何かを目の当たりにする。
【シリーズ一覧】
2003年 箪笥
2009年 ゲスト
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★★☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★★
人間が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★★☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★★
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★★★★★★☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
韓国でオープニング週動員新記録を打ち立てる大ヒットを記録したコリアンホラーの名作。アジアンホラーならではの陰湿な雰囲気、いつ何が起きるか分からない恐怖などが映画全体を覆っていて、見終わった後は良い意味で疲れた。ネタバレ厳禁の内容のため、たくさんは書けないが、スクリーンに映し出されているシーンのほとんどが「実はこういうことだった…」と見終わった後にいくつかの伏線に気付く。そして、最後の最後に鳥肌が立つ展開と結末には様々な見解がなされている件があり、ホラー映画としての怖さだけではなく、ミステリー映画としての醍醐味もあり、一粒で二度美味しい内容になっている。可愛い姉妹に隠された秘密は何なのか、タイトルにもなっている箪笥にはどんな意味が込められているかを予備知識なしで見ていただきたい。

No. 2 オオカミ狩り

【ジャンル】
スプラッター/アクション/サバイバル/突然変異/犯罪
【公開年】
2022年
【製作国】
韓国
【上映時間】
122分
【監督】
キム・ホンソン
【出演者】
ソ・イングク
チャン・ドンユン
ソン・ドンイル
チェ・グィファ
パク・ホサン
チョン・ソミン
【ストーリー】
旧日本軍が開発した人間兵器がある出来事で蘇ったことで、貨物船内が阿鼻叫喚の地獄絵図と化す中、囚人や警察官たちは生死を賭けたサバイバルを繰り広げる。
【シリーズ一覧】
2022年 オオカミ狩り
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★★★★
ゾクゾクする:★★★★★☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★☆
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★★★★★★☆☆☆☆
エロティック:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
視界を赤く染める鮮血の血生臭さに戦慄するスプラッターホラーの傑作。目を覆いたくなるほどの血飛沫とゴア描写の連続で、見終わった後は疲労感が半端なかった。良い意味で褒めてる。容赦ない残酷描写で話題の"哭悲/Thdm Sadness"や"テリファー 終わらない惨劇"に匹敵するほどの血生臭い映画として語り継がれていてもおかしくない。ストーリーは船上という閉鎖空間で犯罪者と怪物がバトルロイヤルを繰り広げるという内容で、"ザ・グリード"や"ゴーストシップ"と似ていて、良くも悪くも王道的で新鮮味に欠けると思う。だが、後半からは予想の斜め上をいく展開が多くて、最後まで飽きずに見ることができた。血で染まり続けるスクリーンを最後まで直視する覚悟ができている人なら思う存分楽しめるだろう。

No. 3 ビー・デビル

【ジャンル】
リベンジ/胸糞/実話
【公開年】
2010年
【製作国】
韓国
【上映時間】
115分
【監督】
チャン・チョルス
【出演者】
ソ・ヨンヒ
チ・ソンウォン
パク・チョンハク
ペク・スリョン
ペ・ソンウ
イ・ジウン
【ストーリー】
ソウルで働く独身のヘウォンは、抱えている様々な問題を忘れるために小さい頃に暮らした島へ向かうが、そこで住民から奴隷のように扱われている幼馴染のボクナムと再会する。
【シリーズ一覧】
2010年 ビー・デビル
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★☆☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★★★☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★★
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★★★★★★★★★☆
エロティック:★★★☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
人間の根底にある闇の部分を抉り出したバイオレンスホラーの傑作。本作品を見る前は、残虐シーンに力を入れただけの単純なリベンジムービーだという先入観を持っていた。だが、実際に見てみると単純に残虐シーンだけを楽しむリベンジムービーではないということが分かった。登場人物の心理に重きを置いたヒューマンドラマ、哲学的で内省的な洞察を与えるといった部分もある。これらの要素が上手い具合に溶け込んでいるおかげで、深みのあるリベンジムービーとして仕上がっているようにも感じた。そして、欲望を満たすだけの加害者や復讐に走る被害者よりも恐ろしいのは、もしかしたら傍観者なのかもしれない。色々考えさせられる内容の映画だった。とはいえ、壮絶な復讐や目を覆いたくなるほどの暴力描写、胸糞展開などの精神的に厳しいシーンが非常に多い内容でもあるため、視聴の際には注意が必要。それでも本作品を通して何かに気づかされることが多くて、見応えのあるホラー映画だったと思う。

No. 4 哭声 コクソン

【ジャンル】
悪魔/憑依/新感覚/摩訶不思議/ミステリー
【公開年】
2016年
【製作国】
韓国
【上映時間】
156分
【監督】
ナ・ホンジン
【出演者】
クァク・ドウォン
ファン・ジョンミン
キム・ファンヒ
チャン・ソヨン
チョン・ウヒ
國村隼
【ストーリー】
平和な村に正体不明のよそ者が住み着いて以来、村人が自身の家族を殺害する事件が続発する中、警察官のジョングは、家族を守るためによそ者の素性を明かそうと奔走する。
【シリーズ一覧】
2016年 哭声 コクソン
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★★★★
オリジナル性:★★★★★★★★★★
人間が怖い度:★★★★★★★★★☆
悪魔が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★★
映像と演出力:★★★★★★★★★★
胸糞が悪い度:★★★★★★☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
怖いと分かっていても目が離せなくなるほどの心理戦と最後まで読めない展開に翻弄されるコリアンホラーの傑作。ホラー映画として文句なしの仕上がりでありながら、更にジャンルを越境する衝撃的な映像と展開まで用意されていて、最後までずっと目が離せなかった。あらゆるジャンルを行き交う独創性だけではなく、考察しがいのある深い結末や不気味な黒魔術師を演じる國村の怪演などの見所もたくさんある。"マリグナント 狂暴な悪夢"のように色々なジャンルを飛び移り延々と転げ落ちていく展開が好きな人ならかなり楽しめると思う。ただ、ハッキリしない結末が苦手な人にはオススメしにくいという点があることも忘れないで欲しい。

No. 5 真夜中の管理人

【ジャンル】
幽霊/憑依/サイコ/ドール/モンスター/オムニバス
【公開年】
2021年
【製作国】
韓国
【上映時間】
106分
【監督】
チョ・バルン
【出演者】
パン・ソンジュン
キム・ホンパ
キム・ボラ
イ・チャンフン
キム・ジェファ
ソ・ヒョヌ
【ストーリー】
スランプに陥ったホラー漫画家のジウは、新しい着想を求めるために幽霊が出るという噂のあるマンションを訪問するが、そのマンションは決して足を踏み入れてはいけない場所であることに気付き始める。
【シリーズ一覧】
2021年 真夜中の管理人
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★☆☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
湿気混じりの不快な空気が画面越しに伝わってくるオムニバスホラーの良作。無機質なコンクリートマンションと得体の知れない何かが本作品をより不気味に仕上げている。どのエピソードもインパクトのある恐怖で楽しめるが、個人的に楽しめたのは「既婚者と不倫している女性」と「友人の家のあちこちにカビが生えている」の2つのエピソード。他のホラー映画ではなかなか見かけないような斬新な恐怖演出に目を奪われたからだ。また、日本のオムニバス形式のホラードラマとして有名な"世にも奇妙な物語"をさらに怖くした感じになっていて、より怖い話を求めている人にはオススメだと思う。

No. 6 コンジアム

【ジャンル】
幽霊/モキュメンタリー
【公開年】
2018年
【製作国】
韓国
【上映時間】
95分
【監督】
チョン・ボムシク
【出演者】
ウィ・ハジュン
パク・ジヒョン
パク・ソンフン
イ・スンウク
ムン・イェウォン
オ・アヨン
【ストーリー】
心霊動画チャンネルの企画でコンジアム精神病院の廃墟に来た7人のYouTuberたちは、遊び半分で病院内を探索していくうちに、想像を絶する恐怖に遭遇する。
【シリーズ一覧】
2018年 コンジアム
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★☆☆☆☆☆☆
人間が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★★★★★☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★★
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
曰く付きの廃病院の中をひたすら逃げ回るしかないYouTuberたちの恐怖が臨場感たっぷりに描かれたジェットコースター感覚のオカルトホラー。不穏な空気が漂う廃病院を舞台として選んだのは良いが、ジャパニーズホラー特有のおどろおどろしさをあまり感じなかった。ジャンプスケア演出を多用した遊園地のお化け屋敷といった感じの内容で、ゾクゾクするような怖さというよりはドキドキするような怖さに近かった。個人的にはすごく怖いとまではいかなかったが、適度な怖さを味わいたい人にはちょうどいいホラー映画だと思う。ただ、本作品と似ている洋画の"グレイヴ・エンカウンターズ"はそこまで怖くなかったということから、本作品はファウンドフッテージ系のホラー映画の中では比較的、怖い部類に入るだろう。臨場感のあるホラー映画が好きな人は必見。

No. 7 殺人鬼から逃げる夜

【ジャンル】
サバイバル/サイコ
【公開年】
2021年
【製作国】
韓国
【上映時間】
103分
【監督】
クォン・オスン
【出演者】
チン・ギジュ
ウィ・ハジュン
パク・フン
キル・ヘヨン
キム・ヘユン
【ストーリー】
聴覚障害を持つギョンミは、人気のない路地裏で殺人鬼のドシクが犯行に及んでいる姿を目撃したことが原因で、彼から命を狙われる羽目に陥る。
【シリーズ一覧】
2021年 殺人鬼から逃げる夜
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★★★★
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★★
映像と演出力:★★★★★★★★★★
胸糞が悪い度:★★★★★★★★☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
感情に任せて他人の命を奪う殺人鬼を描いた恐怖と途切れない緊張感が秀逸なサイコホラー。冷酷な殺人鬼と耳の聞こえないギョンミのスリリングな攻防戦やサイコホラーとしての出来も勿論良かったが、耳の聞こえないギョンミのように障害を持った人々がどれだけ社会的に生き辛いかという、社会派のメッセージが込められているようにも読み取れて、良い意味で韓国らしい映画だと思った。また、突っ込み所満載なストーリー展開が所々にあるものの、それも含めての全体的なB級テイストに仕上げた部分が、本作品の巧いところというのもポイントになっている。中弛みしないスピード感が絶妙、最後まで緊張感を途切らせずに楽しませてくれるといった内容のホラー映画が好きな人なら楽しめるだろう。

No. 8 ザ・コール

【ジャンル】
SF/サイコ/ミステリー
【公開年】
2020年
【製作国】
韓国
【上映時間】
112分
【監督】
イ・チュンヒョン
【出演者】
パク・シネ
チョン・ジョンソ
【ストーリー】
異なる時代に生きるソヨンとヨンスクは、1つの電話で繋がったことがきっかけで、それぞれの運命が狂い始める事態に直面する。
【シリーズ一覧】
2011年 恐怖ノ黒電話
2020年 ザ・コール
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★★★★
オリジナル性:★★★★★★★★★☆
人間が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★★
映像と演出力:★★★★★★★★★★
胸糞が悪い度:★★★★★★★☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
未来を思い通りに変えるサイコパスに立ち向かうが、相手が余りにも賢すぎて主人公のソヨンに同情すら覚えてしまうサイコホラーの傑作。Netflix配信限定のホラー映画は微妙な出来の作品が多い中、本作品は劇場未公開なのが勿体ないと思うぐらい、クオリティの高い映画だった。ホラー映画ならではの不穏な空気感だけではなく、SF映画ならではのタイムパラドックスや家族愛を描いたドラマ、ミステリー映画顔負けの二転三転するストーリーなどもあり、エンターテイメント性の高いホラー映画として楽しめた。このように語り尽くせないほどの魅力がたくさん詰まっていて、韓国映画の底力を見せつけられた。王道的なホラー映画に飽きた人や独創的なエッセンスが凝縮されたホラー映画が好きな人には刺さるかもしれない。

No. 9 消された女

【ジャンル】
犯罪/実話/ミステリー
【公開年】
2016年
【製作国】
韓国
【上映時間】
91分
【監督】
イ・チョルハ
【出演者】
カン・イェウォン
イ・サンユン
チェ・ジノ
チ・デハン
チョン・ミニ
【ストーリー】
TV番組のプロデューサーとして務めているナムスは、精神科病院の火災事件を追跡していくうちに、精神科病院に強制入院させられたスアが書いた日記を発見する。
【シリーズ一覧】
2016年 消された女
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★★★☆
オリジナル性:★★★★★★★★☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★★★☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★☆
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★★★★★★★☆☆☆
エロティック:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
患者本人の同意がなくても、精神科医1人の診断と保護者2人の同意があれば対象者の強制入院を実行することができる法律の恐ろしさを描いたサスペンスホラーの良作。実在した事件を基にした映画である。本作品を見終わった後は、人権を無視した事が実際に行われていたことに対して開いた口が塞がらなかった。また、人間の狂気を描いたサイコホラーとしての怖さだけではなく、二転三転するストーリーもあって、最後まで飽きさせない作りになっていた。真相が明らかになって物語が終わりを迎えようとしていた終盤で全てがひっくり返る衝撃のラストにも戦慄した。犯人や結末に関しては、勘のいい人やミステリー映画をたくさん見てきた人なら途中で分かってしまうかもしれないが、ミステリー映画をあまり見ない人からしたら展開の読めないスリラー映画として純粋に楽しめると思う。

No.10 ホワイト

【ジャンル】
幽霊/ミュージカル
【公開年】
2011年
【製作国】
韓国
【上映時間】
106分
【監督】
キム・ゴック
キム・ソン
【出演者】
ハム・ウンジョン
ファンウ・スルヘ
チン・セヨン
ピョン・ジョンス
【ストーリー】
「ホワイト」のメインボーカルになったメンバーが次々と悲惨な事故に巻き込まれていく中、リーダーとして責任を負っていたウンジュは、「ホワイト」という歌に残酷な呪いが絡んでいることを直感する。
【シリーズ一覧】
2011年 ホワイト
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★☆☆
人間が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
売れないアイドルグループが古いテープを発見したことにより、様々な怪異に襲われる様子を描いたアイドルホラーの良作。設定や舞台は清水監督の"ミンナのウタ"に似ている。"ミンナのウタ"より前に作られたホラー映画のため、オリジナリティに関しては本作品の方が上である。ただ、ホラー映画としての怖さやストーリー展開は"ミンナのウタ"の方が上だと思う。とはいえ、どちらの作品にもそれぞれ違った良さがあり、時間がある時に両方の作品を見比べて欲しい。ちなみに本作品はメインボーカルのポジションを狙うことしか考えていないアイドルたちの醜い競争や怨霊による呪いといった、幽霊と人間の両方とも怖い内容になっていて、かなり見応えはあった。さらに韓国映画ならではの捻りの効いたストーリー展開と華やかな芸能界の裏の愛憎劇もあって、アイドルホラーにしてはなかなか攻めている内容でもあると感じた。コリアンホラーの隠れた名作を発掘している人にはかなりオススメ。

《その他:ランクインしなかったけど怖いホラー映画》
新感染 ファイナル・エクスプレス(2016)、黒い家(2007)、かくれんぼ(2013)、チェイサー(2008)、失踪(2009)、悪魔を見た(2010)、鬘(2005)、絶対クリックしてはいけない動画(2012)、人形霊(2004)、記憶の夜(2017)など。

【特集】見たことを後悔するホラー映画 イギリス編

【イギリスのホラー映画の特徴】
他の国と比べてイギリスでは民間伝承や伝統的な儀式、カルト教団を題材にしたフォクホラーや古典的なゴシックホラーが多い。古代ケルト文化の神秘性や異教徒への恐怖心を利用した、間接的な恐怖描写が特徴。上品なホラー映画が好きな人なら楽しめる可能性は大いにある。

No. 1 ズーム/見えない参加者

【ジャンル】
モキュメンタリー/幽霊
【公開年】
2020年
【製作国】
イギリス
【上映時間】
57分
【監督】
ロブ・サヴェッジ
【出演者】
ヘイリー・ビショップ
ジェマ・ムーア
エマ・ルイーズ・ウェッブ
ラディーナ・ドランドヴァ
キャロライン・ウォード
エドワード・リナード
【ストーリー】
新型コロナウィルスの流行でイギリスがロックダウンされている中、Zoomを介して死者と交信を行うZoom交霊会を軽い気持ちで始めた6人の男女は、それぞれの部屋で次々と起きる怪奇現象に遭遇する。
【シリーズ一覧】
2020年 ズーム/見えない参加者
【評価】
ストーリー性:★★★★☆☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★☆☆☆
人間が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★★★★★★★
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★★★
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
海外メディア「Broadbandchoices」が最も怖いホラー映画を科学的に検証して発表したランキングの中で1位にランクインした作品。アメリカやイギリスのレビューサイトでは批評家からの熱い支持やホラーファンからの高評価などの大評判を呼んでいるにも拘らず、日本での評価は残念ながら微妙。理由はよく分からないが、ストーリーがつまらない、本編終了後の番外編はいらない等の理由が主である。だが、心臓に悪いホラー演出が後半では次から次へと出てくるため、ホラー映画が苦手な方にとってはかなり厳しいだろう。また、本作品は"REC/レック"や"ノロイ"と同様にモキュメンタリーホラー映画になっているため、臨場感があって本当にありそうな恐怖を味わえる。だからこそ個人的にはリアルに感じられて怖い。また、ホラー映画では嫌われがちなジャンプスケア演出が多いように見えて、実は絶妙なタイミングで必要最小限に活用していることから、本作品はおそらく計算し尽くされたホラー映画でもある。心臓に悪い怖さを味わいたい人ならかなり楽しめるはずだ。

No. 2 バイオレンス・レイク

【ジャンル】
胸糞/サイコ/トーチャー/チャイルド
【公開年】
2008年
【製作国】
イギリス
【上映時間】
91分
【監督】
ジェームズ・ワトキンス
【出演者】
ケリー・ライリー
マイケル・ファスベンダー
ジャック・オコンネル
フィン・アトキンス
ブロンソン・ウェッブ
トーマス・ターグーズ
【ストーリー】
エデン・レイクを訪れたカップルのジェニーとスティーブは、悪態をつく不良少年グループに注意をしたことがきっかけで、世にも悍ましい惨劇に巻き込まれる。
【シリーズ一覧】
2008年 バイオレンス・レイク
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★☆☆☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★★★★
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★★★★★
エロティック:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
見たことを後悔するバイオレンスホラーの傑作。暴力に晒された主人公が最後には反撃に転じる又は加害者が罰を受けるなどの希望を打ち砕く展開が待ち受けているため、鬼畜度は"ファニーゲーム"や"デッド・オア・リベンジ"に匹敵するレベルだと思う。また、「親が親なら子も子」という教訓を得ることができるため、人生勉強になるホラー映画でもあるという風に個人的には感じた。劇中に登場する子供たちと似ている境遇で育った人が現実でも事件を起こしてニュースになったりすることがあるため、そういう意味では色々考えさせられる部分もある。今の意見はあくまで、個人的な見解なので鵜呑みにしないで欲しい。かなり人を選ぶ作品だが、刺さる人には刺さるはず。相当な覚悟を持って見て欲しい。

No. 3 ダッシュカム

【ジャンル】
モキュメンタリー/カルト/シニア
【公開年】
2021年
【製作国】
イギリス
【上映時間】
80分
【監督】
ロブ・サヴェッジ
【出演者】
アニー・ハーディ
アマール・チャーダ・パテル
アンジェラ・エナホロ
セイラン・バクスター
【ストーリー】
1人の老女を運ぶという奇妙な配達依頼を受けた迷惑系配信者のアニーは、悪態をつきながらも老女を目的の場所へ運ぶ途中で、衝撃的な光景を目の当たりにする。
【シリーズ一覧】
2021年 ダッシュカム
【評価】
ストーリー性:★★★★☆☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★☆☆
人間が怖い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★★☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
ホラーファンを唸らせるためにひたすら恐怖のみを追求した、直球骨太のモキュメンタリーホラーの怪作。性格の悪い迷惑系配信者を主人公にしている点が斬新で、しかも正体不明の何かにずっと追われてしまうという物語の背景と絶妙にマッチしているのも意外と面白い。様々な種類のホラー要素も容赦なく詰め込んでいるのもあって、ジェットコースターに乗っているかのようなスリルをたっぷり味わえる。さらに誰が最後に生き残るかという点でも今までのホラー映画とは違うのもポイントだ。ホラー映画として怖く仕上がっている反面、下ネタを含むラップや人種差別と思われるような言動、吐瀉物や排泄物などの汚物系描写が多いため、下品な映像が苦手な紳士淑女にとっては苦痛になるかもしれない。このように好き嫌いが意外と分かれるホラー映画だったが、2021年に公開されたホラー映画の中では間違いなく上位に入るほどの面白さを秘めていると個人的には思う。特にモキュメンタリーホラーが好きな人なら確実に楽しめるだろう。

No. 4 シャイニング

【ジャンル】
幽霊/憑依/サイコ
【公開年】
1980年
【製作国】
イギリス
【上映時間】
146分
【監督】
スタンリー・キューブリック
【出演者】
ジャック・ニコルソン
シェリー・デュヴァル
ダニー・ロイド
スキャットマン・クローザース
【ストーリー】
冬の間は豪雪で閉鎖されるホテルの管理人職を得た小説家志望のジャックは、精神に異常をきたした前任者が家族を惨殺した話に怖気づくこともなく、妻と息子を連れて曰く付きのホテルに移り住む。
【シリーズ一覧】
1980年 シャイニング
1997年 シャイニング
2019年 ドクター・スリープ
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★★☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★★☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★★
映像と演出力:★★★★★★★★★★
胸糞が悪い度:★★★★★☆☆☆☆☆
エロティック:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
言わずと知れたホラー映画の金字塔的名作。キューブリック監督が原作をアレンジした状態で映画化したため、原作の執筆者であるスティーヴンは、原作から重要な部分が抜けているとキューブリック監督を批判したことでも有名。個人的な感想としては、不気味な雰囲気を醸し出している音楽、恐怖感を煽るようなカメラワーク、綿密に設計された建物のデザイン、ジャックの鬼気迫る演技など、全てにこだわりを感じられた。執筆者のスティーヴンが本作品を批判する気持ちは分からなくもないが、色々な要素を混ぜたことで逆に完璧なホラー映画として生まれ変わった稀有なる作品という見方もできる。名作に数えられる作品のため、ホラー映画に興味がある方は一度は見ておくべき。

No. 5 ディセント

【ジャンル】
アドベンチャー/サバイバル/モンスター
【公開年】
2005年
【製作国】
イギリス
【上映時間】
99分
【監督】
ニール・マーシャル
【出演者】
ショーナ・マクドナルド
ナタリー・メンドーサ
アレックス・リード
サスキア・マルダー
マイアンナ・バーリン
ノラ=ジェーン・ヌーン
【ストーリー】
スリリングな洞窟探検を楽しむ中、突然の落盤事故で出口を塞がれた6人の女性は、迷路のような洞窟内で別の出口を探しながら彷徨う羽目に陥る。
【シリーズ一覧】
2005年 ディセント
2009年 ディセント2
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
漆黒の暗闇、襲い来る正体不明の怪物、閉鎖空間でのドロドロした人間関係に恐怖に身を包まれる怒涛の90分間を描いたサバイバルホラーの傑作。洞窟内という狭い空間を舞台にしているため、見ている側が閉鎖感で息苦しくなるようなシーンが多く、特に閉所恐怖症の方にはオススメできない。"エイリアン"や"遊星からの物体X"などのモンスターパニック系のホラー映画がたくさんある中で、何かに追い詰められる絶望的な恐怖をリアルに描いた本作品は、ホラー映画としては間違いなく怖いのでは。また、後味の悪いラストは賛否両論が分かれそうだが、個人的には好きな結末で、そのラストについて本作品を見たことがある人と議論してみたいと思えるほど。それぐらい個人的には印象に残った作品でもある。洞窟という名の逃げ場のない世界で物語がどう盛り上がっていくのか。その緻密さと見せ方の妙を未見の方はぜひ味わって欲しい。

No. 6 ジェーン・ドウの解剖

【ジャンル】
ワンシチュエーション/ミステリー
【公開年】
2016年
【製作国】
イギリス
【上映時間】
86分
【監督】
アンドレ・ウーヴレダ
【出演者】
エミール・ハーシュ
ブライアン・コックス
オフィリア・ラヴィボンド
オルウェン・キャサリン・ケリー
【ストーリー】
検死官のトミーとオースティンは、身元不明の遺体を解剖したことがきっかけで、得体の知れない恐怖に遭遇する。
【シリーズ一覧】
2016年 ジェーン・ドウの解剖
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★☆☆☆
人間が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★★★★☆☆
スプラッター:★★★★☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★★☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★★
映像と演出力:★★★★★★★★★★
胸糞が悪い度:★★★★★☆☆☆☆☆
エロティック:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
遺体として運ばれた美女の解剖を進めていくうちに謎が明らかになっていくストーリー展開と恐怖が加速していく演出に鳥肌が立つミステリーホラーの傑作。"リング"や"残穢 住んではいけない部屋"などのジャパニーズホラーに近い、身の毛がよだつ怖さが本作品の見所である。ほぼ安置室のみというワンシチュエーションの中で、ミステリアスなストーリーが展開しているにも拘らず、緊張感が最後まで途切れないため、本作品のホラー映画としての完成度の高さが垣間見えた。また、お化け屋敷のような安置室の内装や小道具で演出される映像美も本作品の魅力。淡々と物語が進行していくのにしっかり怖い、派手な演出がなくても見終わった後に残る怖さが好きな人にはオススメ。

No. 7 The Children

【ジャンル】
チャイルド
【公開年】
2008年
【製作国】
イギリス
【上映時間】
84分
【監督】
トム・シャンクランド
【出演者】
エヴァ・バーシッスル
ティーヴン・キャンベル・ムーア
ジェレミー・シェフィールド
レイチェル・シェリ
ハナー・トイントン
【ストーリー】
人里離れた屋敷でクリスマス休暇を楽しむ2組の家族は、真っ白な雪に覆われた外で、殺人鬼と化した子供たちが集団で大人を惨殺する光景を目の当たりにする。
【シリーズ一覧】
2008年 The Children
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★☆☆☆☆☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★★★★
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★★☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
絶望的な恐怖を味わえるチャイルドホラーの問題作。タイトルの通り、子供たちが大人たちを襲って惨殺するという不気味な内容。何を考えているのかが分からない子供たちの無邪気な笑顔が恐怖をより引き立たせてくれる。さらに12月のクリスマスを舞台にしているせいか、白い雪と赤い血のコントラストも美しい。田舎の静寂と今にも何かが起こりそうなただならぬ雰囲気の演出も上手くて最初から最後まで震えっぱなしだった。それぐらい恐ろしい内容であるにも拘らず、日本では劇場未公開でDVDスルーもなし。劇場未公開なのがすごく勿体ない。純粋に怖がりたいという人には打って付けの映画であることは間違いないはずだ。また、クリスマスに見るべきホラー映画といえば、"屋敷女"や"悪魔のサンタクロース/惨殺の斧"が真っ先に思い浮かぶが、本作品の存在も忘れないで欲しいとつくづく感じた。

No. 8 28日後…

【ジャンル】
ゾンビ/ドラマ/サバイバル/アクション/アドベンチャー
【公開年】
2002年
【製作国】
イギリス
【上映時間】
113分
【監督】
ダニー・ボイル
【出演者】
キリアン・マーフィ
ナオミ・ハリス
クリストファー・エクルストン
ミーガン・バーンズ
【ストーリー】
人間を狂暴化させる感染病の大流行から28日後、病院の集中治療室で意識を取り戻したジムは、ゴーストタウンと化したロンドンで、自分以外の生存者を探しながら生死を賭けたサバイバルを繰り広げる。
【シリーズ一覧】
2002年 28日後…
2007年 28週後
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★☆☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★☆☆☆☆☆☆
エロティック:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
人間を狂暴化させる感染病の大流行から28日後の荒廃した世界の様子を描いたサバイバルホラーの傑作。意識を取り戻したジムが感染病の大流行から28日後の変わり果てたロンドンに呆然としながら彷徨う場面は名シーン。ホラー映画として捉えたら個人的にはそこまで怖くはないと思う。だが、足の速いゾンビで埋め尽くされるという極限状態の中で、生き残ることで精一杯な生存者たちのエゴと尊厳が描かれるドラマとしても見応えがあった。つまりゾンビ映画としてのスリルとシリアスなドラマのバランス具合が絶妙。ホラー映画として震え上がれなかったとしても、見終わった後は「面白い映画を見た」という気持ちにさせてくれた。ゾンビ映画が好きな人とそうではない人の両方を楽しませてくれるダニー監督の才能に脱帽するばかり。ホラー映画が苦手な人にも見て欲しいと感じる作品だった。

No. 9 ラストナイト・イン・ソーホー

【ジャンル】
幽霊/歴史劇/ジャーロ/ミステリー/ファンタジー/ミュージカル
【公開年】
2021年
【製作国】
イギリス
【上映時間】
116分
【監督】
エドガー・ライト
【出演者】
アニャ・テイラー=ジョイ
トーマシン・マッケンジー
マット・スミス
ダイアナ・リグ
シノーヴ・カールセン
マイケル・アジャオ
【ストーリー】
ファッションデザイナーを目指すエロイーズは、夢の中で華やかな歌手のサンディが殺される場面を目撃した日を境に、常軌を逸した行動を繰り返し始める。
【シリーズ一覧】
2021年 
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★★☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★★
人間が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:★★★★★★☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★☆☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★★
映像と演出力:★★★★★★★★★★
胸糞が悪い度:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
エロティック:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
煌びやかなネオンライトが照らすロンドンの歴史の裏に隠されたショービズの闇が垣間見えるサイケデリックホラーの傑作。ホラー映画としての怖さは個人的にはそこまでないと思うが、見終わった後の満足感は高めだった。音楽や映像のセンス、脚本も素晴らしいが、虚飾と頽廃に満ちたショービズ界の深い闇、悪夢と現実の区別がつかなくなるホラー描写などが後半では畳み掛けてくるため、ホラー映画が苦手な人でも少し怖いと感じるかもしれない。それでも脚本、恐怖、映像、音楽などの映画を楽しむ上で欠かせない要素がバランス良く散りばめられていて、どの人でも楽しみやすいと思う。また、サイケデリックホラーの名作として知られている"サスペリア"のように芸術的な美しさと恐怖を同時に味わいたい方にもオススメ。

No.10 インブレッド

【ジャンル】
汚物/スプラッター
【公開年】
2011年
【製作国】
イギリス
【上映時間】
98分
【監督】
アレックス・シャンドン
【出演者】
ジョー・ハートリー
ジェームズ・ドハティ
シーマス・オニール
ナディーン・ローズ・マルケリン
テリー・ヘイウッド
ジェームズ・バロウズ
【ストーリー】
保護観察官に引率された4人の少年犯罪者たちは、社会奉仕活動のために訪れた村で、残虐な殺戮を楽しむ異常者たちに遭遇する。
【シリーズ一覧】
2011年 インブレッド
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★☆☆☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★★☆☆
ゾクゾクする:★★★★★☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★☆☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★☆☆☆☆
エロティック:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
若者たちが血祭りに上げられる様子を残酷にかつコミカルに描く不謹慎なスプラッターホラー。奇妙な習慣が残る村で狂人が若者たちに襲い掛かるという王道的なストーリーで、新鮮味はあまり感じない。だが、他のスプラッターホラーではなかなか見られない、独創的な残虐描写に釘付けになった。特に腹が破裂するまで糞尿を強制的に飲ませるシーンが印象に残った。余談だが、雰囲気や設定が"2001人の狂宴"に似ていることから、アレックス監督は"2001人の狂宴"を気に入っているのかなと個人的にはつくづく感じた。"屋敷女"や"マーターズ"のように悲壮感たっぷりなスプラッターホラーに飽きた人ならコミカルな本作品を楽しめるかもしれない。

《その他:ランクインしなかったけど怖いホラー映画》
キル・リスト(2011)、ヘルレイザー(1987)、肉体の悪魔(1971)、Possum(2018)、ドッグ・ソルジャー(2002)、0:34(2004)、ウィッカーマン(1973)、Mum & Dad(2008)、ヘル・フィールド ナチスの戦城(2020)、ザ・リチュアル いけにえの儀式(2017)など。

【特集】見たことを後悔するホラー映画 フランス編

【フランスのホラー映画の特徴】
小粋でオシャレなラブストーリーというイメージが強いフランス映画とは正反対に徹底的なスプラッター描写で見る者をひたすら不快感の底なし沼へと落とし込んでいくことが多いのが特徴。また、エンターテイメント性が高いアメリカのホラー映画とは一線を画すスタイリッシュで強烈なストーリー展開も印象的だ。

No. 1 屋敷女

【ジャンル】
スプラッター/サイコ/問題作
【公開年】
2007年
【製作国】
フランス
【上映時間】
82分
【監督】
ジュリアン・モーリー
アレクサンドル・バスティロ
【出演者】
ベアトリス・ダル
アリソン・パラディ
【ストーリー】
出産予定日が近づいている妊婦のサラは、黒い服を着た不審な女性が家の前に現れたことがきっかけで、身も凍るほどの恐ろしい惨劇に巻き込まれる。
【シリーズ一覧】
2007年 屋敷女
2016年 インサイド
【評価】
ストーリー性:★★★★☆☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★★★★
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★★★★
ゾクゾクする:★★★★★★★★★☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★☆
映像と演出力:★★★★★★★☆☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★★★★☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
過激な残虐描写でホラーマニアから多大な支持を獲得したスプラッターホラーの傑作。倫理的物議を醸した問題作としても有名。今までに見てきたホラー映画がコメディ映画に思えるほど、狂気に満ちた内容だった。残虐描写も激しいが、妊婦と胎児を狙う殺人鬼の言動と行動がより悍ましい。目的を果たすための強圧的な様相にも虫唾が走る。さらに視聴者の精神を八つ裂きにする結末は、二度見すること間違いなし。視聴者の精神を八つ裂きにする結末に関しては、妊娠中の女性が見たら間違いなくトラウマになるだろう。妊娠中の女性にはあまりオススメできない作品だったが、本物の地獄を味わいたい強者なら楽しめるはずだ。

No. 2 マーターズ

【ジャンル】
胸糞/新感覚/問題作/カルト/リベンジ/ミステリー/トーチャー
【公開年】
2008年
【製作国】
フランス
【上映時間】
99分
【監督】
パスカル・ロジェ
【出演者】
モルジャーナ・アラウィ
ミレーヌ・ジャンパノイ
カトリーヌ・ベジャン
イザベル・シャス
エミリー・ミスクジャン
グザヴィエ・ドラン
【ストーリー】
長期に渡って拷問と虐待を受けていた過去を抱えているリュシーは、たまたま読んでいた新聞記事のおかげで、自分を虐待した犯人の居場所を突き止めることに成功する。
【シリーズ一覧】
2008年 マーターズ
2015年 マーターズ
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★★
人間が怖い度:★★★★★★★★★★
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★★☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★★
映像と演出力:★★★★★★★★★★
胸糞が悪い度:★★★★★★★★★★
エロティック:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
人間の神経が感じ得る痛みを全方位から責め立てる状態が終始、続いているかのようなバイオレンスホラーの傑作。"屋敷女"や"ハイテンション"と並ぶフレンチホラーの傑作として世界的に知られている。本作品のポスターやDVDのジャケットはグロテスクに見えるが、過激な残虐描写を演出することで有名な"屋敷女"や"ハイテンション"などのフレンチホラーと比較すると残虐描写のインパクトは、実は弱めである。フレンチホラーの中では残虐描写のインパクトは弱めだが、剃刀で腕を切開する、全身の皮膚を剥ぐなどの目を背けたくなるほどの痛々しい描写が惜しみなく映されているため、そのような表現が苦手な方は要注意。さらに常軌を逸した不快さと二転三転するストーリー展開も見応えがある。ただ、致命的な欠点が一つある。それは哲学的なメッセージを理解したり意味深な結末を考察したりすることが苦手な方からすると楽しめない部分だと思う。要するに結末をどう捉えるか又はどう解釈するかで評価が大きく変わるホラー映画でもあるのだ。残酷さと哲学的なメッセージが同居するホラー映画が好きな人にはオススメできるかもしれない。

No. 3 アレックス

【ジャンル】
犯罪/胸糞/問題作/ドラマ/リベンジ/アートハウス/エロティック
【公開年】
2002年
【製作国】
フランス
【上映時間】
97分
【監督】
ギャスパー・ノエ
【出演者】
モニカ・ベルッチ
ヴァンサン・カッセル
アルベール・デュポンテル
フィリップ・ナオン
ジョー・プレスティア
【ストーリー】
婚約者のアレックスが見知らぬ男性からの性暴力を受ける事件が発生したことがきっかけで、マルキュスは友人のピエールと共に犯人探しを開始する。
【シリーズ一覧】
2002年 アレックス
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★★
人間が怖い度:★★★★★★★★☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★★★
胸糞が悪い度:★★★★★★★★★★
エロティック:★★★★★★★☆☆☆
【感想】
時は全てを破壊する。このシンプルなキャッチコピーが印象的。個人的にはもう二度と見たくないと思えるほど、気持ち悪くなった。本作品の特徴を単刀直入に表現するとしたら、高熱を出している状態で悪い夢を見続けているかのようなホラー映画だ。例の9分間で観客の心を崩壊させる展開が待ち受けており、特に女性にはオススメできない。見終わった後は一人で夜道を歩くことができない女性が増えてもおかしくないほどだ。時間軸を逆再生したストーリー展開と上下左右に揺れ動くカメラワークで演出する中、誰にでも突然の不幸は訪れるのだという、強烈なメッセージ性が含まれている点も特筆すべき点。特に女性側にとっての不快指数は高いだろう。全ての人に見て欲しいとは言えないが、一生心に傷を負ってもいいという覚悟ができている人には見て欲しい。

No. 4 ハイテンション

【ジャンル】
恋愛/サイコ/スプラッター
【公開年】
2003年
【製作国】
フランス
【上映時間】
91分
【監督】
アレクサンドル・アジャ
【出演者】
セシル・ドゥ・フランス
マイウェン・ル・ベスコ
フィリップ・ナオン
フランク・カルフン
アンドレイ・フィンティ
【ストーリー】
アレックスの家で惨殺事件に遭遇したマリーは、殺人鬼に連れ去られたアレックスを救出するために必死に追跡を始める。
【シリーズ一覧】
2003年 ハイテンション
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★☆☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★★☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★★☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★☆☆☆☆
エロティック:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
フレンチホラーに新たな風を吹かせたスプラッターホラーの傑作。単なるスプラッターホラーでは終わらず、捻りの効いたストーリー展開、痛々しいのに美しいと感じてしまう残虐描写、暗くて重々しい雰囲気、レズビアン要素などのフランスらしいセンスが所々に光っていて、そこら辺にあるスプラッターホラーよりは面白かった。結末はミステリー映画やサスペンス映画などをある程度見てきた人からすると予想しやすい展開になっていて、衝撃度はそこまで高くない。だが、官能的、衝撃的なラスト、景気の良い血飛沫が揃っているスプラッターホラーはいくら探してもなかなか出会えないと思う。普通のスプラッターホラー又はスラッシャーホラーに飽きた人なら楽しめるに違いない。

No. 5 RAW 少女のめざめ

【ジャンル】
青春/恋愛/ドラマ/カニバリスム/アートハウス
【公開年】
2016年
【製作国】
フランス
【上映時間】
99分
【監督】
ジュリア・デュクルノー
【出演者】
ギャランス・マリリアー
エラ・ルンプフ
ローラン・リュカ
ブーリ・ランネール
【ストーリー】
ベジタリアンのジュスティーヌは、新入生の通過儀礼として動物の肉を口にしたことが原因で、予期せぬ事態に直面する。
【シリーズ一覧】
2016年 RAW 少女のめざめ
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★★☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★☆
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★★★★★★☆☆☆☆
エロティック:★★★★☆☆☆☆☆☆
【感想】
カンヌ国際映画祭をはじめ、各国の映画祭を驚かせたカニバリズムホラーの問題作。肉を食べたことでベジタリアンのジュスティーヌに眠っていた本能が覚醒するボディホラーであると同時に思春期特有の苦悩や家族愛のドラマ描写も丁寧に描かれていて、唯一無二の存在感を放っている作品であるように感じた。ちなみに本作品は、"イット・フォローズ"や"ブルー・マインド"のホラー映画と共通しているポイントが多いため、大人へと変わっていく内なる変化に戸惑う女の子の不安を丁寧に描いた青春ホラーが好きな人には刺さるかもしれない。特に若い女性は共感しやすいと思う。ただ、カニバリズムという題材を扱っていることからグロテスクな描写はもちろん多めで、その辺には注意して欲しい。

No. 6 フロンティア

【ジャンル】
スプラッター/カニバリスム/アクション
【公開年】
2007年
【製作国】
フランス
【上映時間】
108分
【監督】
ザヴィエ・ジャン
【出演者】
カリーナ・テスタ
サミュエル・ル・ビアン
エステル・ルフェビュール
オレリアン・ウィイク
パトリック・リガルデ
ダヴィド・サラシーノ
【ストーリー】
亡命資金を集める目的の強盗が失敗に終わった移民のヤスミンは、恋人のアレックスと共に強盗の仲間と落ち合う予定の国境近くの小さな宿へ向かうが、そこで想像を絶する苦痛と恐怖の地獄を目の当たりにする。
【シリーズ一覧】
2007年 フロンティア
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★☆☆☆☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★★☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★☆☆☆☆
エロティック:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
血で血を洗う殺し合いに震撼するサバイバルホラーの傑作。言い方が悪いかもしれないが"悪魔のいけにえ"のフランス版と言ってもおかしくないほどのストーリーだった。筋書きや家族構成も"悪魔のいけにえ"とほぼ同じ。ただ、レザーフェイスのような存在感のある殺人鬼は登場しない。オリジナリティは薄いかもしれないが、チェーンソーでの切断、人間蒸し焼き、アキレス腱切断などのスプラッター描写に関しては文句なしに秀抜。余談だが、タイトルにもなっている"フロンティア"は、国境を意味していることからザヴィエ監督はEU分裂への危機感を描きたかったのかもしれない。個人的な解釈になるが、ザヴィエ監督はフレンチホラーらしい過剰な流血シーンを描きつつ、EU全体が平和になって欲しいという願いを伝えようとしていたのではないかと考えている。痛々しい描写だけではなく、フランスの社会問題も盛り込むことで、より深みを感じさせようとするザヴィエ監督の手腕は流石だと思う。

No. 7 イン・マイ・スキン

【ジャンル】
病気/問題作/ドラマ
【公開年】
2002年
【製作国】
フランス
【上映時間】
93分
【監督】
マリナ・ドゥ・ヴァン
【出演者】
マリナ・ドゥ・ヴァン
ローラン・リュカ
レア・ドリュッケール
ティボール・ド・モンタレンベール
【ストーリー】
パーティー会場で酷い怪我を負ったにも拘らず、痛みをまったく感じなかったエステルは、この経験を基に自身の傷や皮膚に対する好奇心に目覚め始める。
【シリーズ一覧】
2002年 イン・マイ・スキン
【評価】
ストーリー性:★★★★★★☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★★
人間が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★★☆☆☆☆
エロティック:★★★☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
2003年のフランス映画祭にて途中退場者が続出したフレンチホラーの問題作。ジャンルはドラマと括られているが、そこら辺にあるスプラッターホラーよりも痛々しい描写が多くて、見るには相当の覚悟が必要。映画の出来はさておき、本作品はもう二度と見たくないと思った。"屋敷女"や"テリファー"のように内臓や血が大量に流れるようなグロさはないが、顔が引き攣るほどの痛々しいシーンが多かったのが印象的。自身の傷口を抉る、皮膚を剥ぎ取る、剥ぎ取った皮膚をホルマリン漬けにして保存するなどの描写があり、この時点でモラルが崩壊しているように感じた。また、自己嫌悪と自傷の狭間で葛藤している心理描写も生々しくて、見ているこっちが苦しくなってきた。下手なホラー映画よりも恐ろしかった。万人受けしない内容ではあるが、刺さる人には刺さる物語となっていている。

No. 8 ゴーストランドの惨劇

【ジャンル】
ミステリー/トーチャー/サイコ/犯罪
【公開年】
2018年
【製作国】
フランス
【上映時間】
91分
【監督】
パスカル・ロジェ
【出演者】
クリスタル・リード
アナスタシア・フィリップス
エミリア・ジョーンズ
テイラー・ヒックソン
ミレーヌ・ファルメール
【ストーリー】
2人の暴漢が家に押し入ってくるという事態に直面したシングルマザーのポリーンは、双子の娘を守るために必死に反撃したことで、娘たちと共に奇跡的な生還を果たす。
【シリーズ一覧】
2018年 ゴーストランドの惨劇
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★☆☆☆
人間が怖い度:★★★★★★★★☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★★☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★★
映像と演出力:★★★★★★★★★☆
胸糞が悪い度:★★★★★★★☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
現実と妄想の狭間を彷徨う少女、時間軸を巧みに交差させる映像、不気味な人形で溢れた館などの独特なセンスが光るバイオレンスホラーの傑作。"マーターズ"を生み出したパスカル・ロジェ監督なだけあって、若い女性への過剰な暴力描写は本作品でも健在。さらに"マーターズ"と同様に二転三転するストーリーも含まれているため、何度も観客を絶望のどん底に突き落とすのが上手いなと感じた。単なる暴力描写だけのホラー映画に終わらず、どこか深みのある描写と演出が印象的で、他のホラー映画とは一線を画す物語でもあった。女性にはオススメしづらい映画だが、かなりオリジナリティのある内容で、見る価値はあると個人的には思う。

No. 9 ザ・ホード 死霊の大群

【ジャンル】
ゾンビ/アクション/サバイバル
【公開年】
2009年
【製作国】
フランス
【上映時間】
90分
【監督】
ヤニック・ダアン
バンジャマン・ロシェ
【出演者】
クロード・ペロン
ジャン=ピエール・マルタン
エリック・エブアニー
オーレリアン・ルコワン
ドゥードゥー・マスタ
【ストーリー】
ギャング団に同僚を殺された警察官たちは、復讐を果たすために仲間と共にギャング団の潜伏するビルに入り込むが、そこでビル内全体が大混乱に陥る惨劇に巻き込まれる。
【シリーズ一覧】
2009年 ザ・ホード 死霊の大群
【評価】
ストーリー性:★★★★★☆☆☆☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★☆
人間が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★★★★☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★★★★☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★★☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★☆☆
映像と演出力:★★★★★★★★☆☆
胸糞が悪い度:★★★★★☆☆☆☆☆
エロティック:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【感想】
本当に怖いのはゾンビではなく生きている人間であるということを思い知らされたゾンビ映画の傑作。王道的なゾンビ映画とは一線を画す作品となっていて、好き嫌いが分かれるかもしれないが個人的には楽しめた。仲間を殺された警察官とマフィアが対立する中、閉鎖された空間にゾンビが現れるという絶望的な状況を描いた作品は珍しいと思う。ゾンビ映画のほとんどはショッピングモールに避難した生存者たちがサバイバルを繰り広げるという展開が多いからだ。また、ゾンビだらけの世界を生き延びるために警察官が仕方なく、敵側のマフィアと手を組むという展開があり、その展開ならではの心理描写も独特で面白かった。王道的なゾンビ映画に飽きた人や"28日後…"のようにゾンビが疾走するホラー映画を見たい人にはオススメだろう。

No.10 TITANE/チタン

【ジャンル】
突然変異/新感覚/ドラマ/サイコ
【公開年】
2021年
【製作国】
フランス
【上映時間】
108分
【監督】
ジュリア・デュクルノー
【出演者】
アガト・ルセル
ヴァンサン・ランドン
ギャランス・マリリアー
ナタリー・ボイヤー
ドミニク・フロ
ミリエム・アケディウ
【ストーリー】
幼少時の交通事故が原因で、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込んで生活しているアレクシアは、ふとした成り行きから消防士のヴァンサンと共に奇妙な共同生活を始める。
【シリーズ一覧】
2021年 TITANE/チタン
【評価】
ストーリー性:★★★★★★★★☆☆
オリジナル性:★★★★★★★★★★
人間が怖い度:★★★★★★★☆☆☆
悪魔が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幽霊が怖い度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
怪物が怖い度:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
スプラッター:★★★★☆☆☆☆☆☆
ゾクゾクする:★★★★★☆☆☆☆☆
俳優の演技力:★★★★★★★★★★
映像と演出力:★★★★★★★★★★
胸糞が悪い度:★★★★★☆☆☆☆☆
エロティック:★★★★☆☆☆☆☆☆
【感想】
シリアルキラーのアレクシアが車と性的に交わるというユニークなシチュエーションを描いたボディホラーの異色作。始めから終わりまでぶっ飛んだストーリーが続いていて、見終わった後は「何か凄いものを見たな〜」という感想が真っ先に浮かんだ。他にも感想を書きたいが、上手く言葉では言い表せないほどの難しい内容でもあったため、本作品に対するキャッチコピーや個人的な解釈が未だに見つからない。「あなたはこの映画を見てどう感じたか?」という強烈なメッセージを投げかけられているような気がした。また、見るからに痛そうな暴力描写も意外と多くて、好き嫌いがかなり分かれる。暴力描写に耐えられる方と色々な考察をしたい方なら楽しめると思う。それにしても独創性に満ちたホラー映画で、何とも言えない気分になった。

《その他:ランクインしなかったけど怖いホラー映画》
リヴィッド(2011)、ゲーム・オブ・デス(2017)、スウィート・ムービー(1974)、呪術召喚 カンディシャ(2020)、ゾンビ・クィーン/魔界のえじき(1982)、ガーゴイル(2001)、正体不明 THEM(2006)、-less[レス](2003)、REVENGE(2017)など。